【欧州、水素へ傾く】ジャガー・ランドローバー 水素燃料電池技術の開発促進 1年以内にテスト開始

公開 : 2021.02.18 06:25  更新 : 2022.11.01 08:42

技術上の課題も解決が進む

また、クルマの水素貯蔵の問題も解決に近づいている。現在、水素を高圧力で貯蔵するためには、比較的高価なフィラメントを使用したタンクが必要であり、クルマに搭載するのは非常に困難である。

米国ノースウェスタン大学の研究チームは、「有機金属フレームワーク」と呼ばれる新しい素材を開発した。これにより、一定の空間に大量の水素ガスを低圧力で貯蔵することができるという。この素材はスポンジのような働きをしており、ガスを吸収して圧力をかけて放出することができると説明されている。

トヨタ・ミライ
トヨタ・ミライ

この技術により、現在の床下バッテリーと同じスペースに水素タンクを設置することが可能になる。複数の動力源に対応できるJLRのMLAプラットフォームにとっても理想的な技術だ。

ドイツでもコンパクトな水素タンクの開発が進められているほか、フランスの部品サプライヤーであるフォルシア社は、新しい熱可塑性水素貯蔵タンク(ガス貯蔵量1kgあたり400ユーロ/約5万円の生産コスト)を開発中だ。

重量やコストという点でも、水素燃料電池はバッテリー式パワートレインよりも優位に立つかもしれない。

トヨタ・ミライに搭載されている3つの水素タンクの重量は87kgで、5kgのガスで500kmの航続距離を実現している。対照的に、バッテリーEVのテスラモデルSロングレンジは、95kWhのバッテリー(約540kg)で515kmの航続距離を実現している。

この差は、燃料電池スタックと小型バッテリーを追加した場合でも、FCEVがBEVよりも大きな重量優位性を持つことを示している。

現在のEV用バッテリーの生産コストは、1kWhあたり約118ポンド(1万7000円)であるため、95kWhでは11万ポンド(159万円)程度のコストがかかると思われる。

フォルシア社が限定生産する熱可塑性水素タンク(年間約3万個)でさえ、同じようなレベルであれば、わずか1820ポンド(24万円)で済む。

一度は行き詰まりと見られていた水素燃料電池技術は、自動車産業における脱炭素化競争の勝者になる可能性がある。EV用バッテリーは地政学的、倫理的な問題を抱えている。

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