【最新ハッチバック比較】フォルクスワーゲン・ゴルフGTI x フォード・フォーカスST 前編

公開 : 2021.02.27 09:45  更新 : 2021.05.18 16:24

速度域が高まるほど変化する印象

フォード・フォーカスSTの車内に、上質さを感じるわけではない。だが、価格が半分くらいのフィエスタの隣に並べば、違いがわかる。フォーカスの部品の質感は、しっかりフィエスタより上にある。不足ない程度に。

車両設定を選ぶシステムも、フォーカスSTの方がシンプルで理解しやすい。これまでで初めてかもしれない。フォード・ブルーが強調されたグラフィックは若干不快に思えたが、それがなければライバルに対して良いリードを得ている。

オレンジのフォード・フォーカスSTとレッドのフォルクスワーゲン・ゴルフGTI
オレンジのフォード・フォーカスSTとレッドのフォルクスワーゲン・ゴルフGTI

実際に両者を比較してみると、フォーカスSTのインテリアの方が雰囲気は安っぽい。ゴルフGTIの印象を踏まえても、もの足りなく感じてしまう。3万ポンド(432万円)もするクルマなら、もう少し、を求めたい。

そんな車内の眺めも、ホットハッチに適した道に出れば気にならなくなる。大きなモニターの鮮やかな光が、フォーカスSTなら目障りになることもない。

試乗コースは英国西部、エクスムーア国立公園。両者の真価を確かめるなら、シフトノブを握って駆け抜けるのが一番だ。

走り始めてみると、フォーカスSTの第一印象はあまり良くなかった。電動パワーステアリングは、切り始めで特に少し人工的な感覚がある。変速フィールも悪くないが、良いわけでもない。

でも、エンジンとサスペンションが本気で仕事をし始める速度域になると、その印象は変わってくる。理にかなっているように、ハマってくる。

充足感に溢れた特別な体験

起伏とカーブの変化に富んだ道を飛ばすと、驚くほどにイイ。4気筒ガソリン・ターボエンジンは、強い個性を放ちだす。知的なフロント・サスペンションと電子制御のリミテッドスリップ・デフは、確実に路面へ豊かなトルクを伝えてくれる。

スポーツ・モードで、エンジンとダンパーの設定を個別に選べないのは、改善してほしい部分。そのかわり、デフォルトのままでも活気は充分。ドライブモードは、普段は切り替えない方が良いかもしれない。

フォード・フォーカスST エコブースト(英国仕様)
フォード・フォーカスST エコブースト(英国仕様)

印象の変化に気を良くしスピードをさらに速めていくと、フォーカスSTは一層光りだす。目的地までの高速移動が、充足感に溢れた特別な体験へ高まっていく。

一般道で許される速度域なら、エネルギー不足を感じることはない。フォーカスSTで味わえる、楽しさの次元は非常に高い。グリップ力は超が付くほど強力で、コーナーではひたすらに落ち着いている。

フロントノーズがどの方向に進もうとしているのか、常に理解できる。ダイナミック・モードを選んでいても、安定性は失わない。アクセル操作で、テールの位置も思いのままに操れる。

先代のフォーカスRSほど速くはないかもしれない。しかし、よりシャープでコミュニケーション力は豊か。ドライバーはクルマの反応を予想しやすい。

フォーカスRSの後継モデルを出さなかったというフォードの決定に、疑問は残る。それでも、フォーカスSTの自由度には唸らされてしまう。

この続きは後編にて。

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