【最新ハッチバック比較】フォルクスワーゲン・ゴルフGTI x フォード・フォーカスST 後編
公開 : 2021.02.28 09:45 更新 : 2021.05.18 16:24
欧州で長きに渡りライバル関係にある、VWゴルフGTIとフォード・フォーカスST。ゴルフが8代目へ代替わりした今、どちらがベストといえるのか、英国編集部が評価しました。
GTIへ期待する以上にレーシーな性格
8代目のフォルクスワーゲン・ゴルフGTIには何を期待するだろう。目新しい技術ではなく、内面的な高い完成度ではないだろうか。今までのGTIでも、目をむくほどの驚きはなかったとしても、走りには常に感動し引き込まれてきた。
最新版はどうだろう。試乗車にはオプションのアダプティブ・ダンパーが装備され、ドライブモードの機能の1つとして、15段階の設定から選べる。
その違いを確かめるのは楽しい。しかし、路面の変化に飛んだ典型的な英国郊外の道では、さらにソフトな設定を選びたくなってしまった。ゴルフGTIへ期待する以上に、レーシーな性格は変えられない。
カタログ・スペック上では、フォーカスSTよりゴルフGTIの方が遅い。確かに走ってもギャップはあるものの、数字ほどの差は感じられない。明確な弱点も見当たらない。
ステアリングの人工的な感覚も両車に見られるが、ドライバーが不満を抱くことはないだろう。ゴルフGTIのエンジンも優秀。フォーカスSTのユニットほど個性が強いわけではないにしろ、滑らかに吹け上がる。シフトフィーリングはむしろ良い。
シャシーではフォーカスの方が優勢のようだ。ゴルフは俊敏さを高めてあるが、フォーカスの水準には届いていない。アクセルペダルの踏み込み量で、効果的にコーナリング姿勢を変えていくことができない。
新しい方程式に取り組んだゴルフ
トラクションは素晴らしく、コーナーリング時の安定性は完璧。しかし、変化に富んだ道と呼吸するように走る、先代までのゴルフGTIが備えていた素晴らしい感覚が薄い。スポーティさを高めるために、犠牲になったのだろう。
正しいトレードオフだったのだろうか。ハンドリングに対する考え方で、ゴルフがフォーカス側へ近づいたわけではない。乗り心地も同様。筆者はあまり好ましく思えなかった。
ノーマルのままでも、フォーカスSTの乗り心地は硬いが、特性には一貫性を感じる。快適とまではいえないにしろ、ホットハッチとして考えれば充分。不意を突くような振動もない。
ゴルフGTIの乗り心地も同様に硬い。フォーカスSTと似ている。しかし、どこか一貫性が足りていない。荒れた路面なら乗り心地が良くなるとまとめたいところだが、実際はフォーカスSTの方がうわてのようだ。
全体的には、ゴルフGTIの方が乗り心地は優れると思う。しかし、差は小さい。
新しい好奇心に動いた8代目ゴルフGTI。一度にバランスを崩したわけではない。優れた2代目や5代目、7代目GTIのように、深く記憶へ刻まれることはないかもしれない、というだけだ。
フォルクスワーゲンが、新しい方程式に取り組んだことは間違いないだろう。それにより、失った部分もなくはなかった。