【直6エンジン・サルーン比較】ボルボ164とデイムラー・ソブリン2.8 1968年の同級生 前編

公開 : 2021.03.07 07:05

より高価なクルマを不要にするほどの内容

ジャガーXJ6はカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれることはなかった。しかし当時の自動車ジャーナリスト、LJK.セトライトはこれまでになく高い評価を残している。

「より高価なクルマを不要にするほどの内容を備えています。それが最大のポイント。これに匹敵するモデルは、正直思い当たりません」

デイムラー・ソブリン2.8(1968-1973年)
デイムラー・ソブリン2.8(1968-1973年)

発表から1年も経たないうちに、ジャガーXJ6は沢山のバックオーダーを抱える。納車待ちの時間を短くするために、1000ポンド高い金額で売買されていたという情報も残っているほど。

高い人気もあり、デイムラー版XJの登場は多くの人が予想するものだった。1960年、ジャガーは英国伝統の自動車ブランドを買収。デイムラーが消滅するのではないか、という噂を一掃するプレスリリースを発表していた。

とはいえ当時の自動車ファンは、ゆっくり衰退するデイムラーを見届けることになる。1964年にはSP250、1968年にはマジェスティック・メジャーやDR450といったデイムラー独自のモデルが次々に終了していった。

1966年に登場した420ソブリンは、ジャガーのバッジ・エンジニアリング。デイムラー・ソブリンもジャガーXJ6をベースとしていた。1962年の2 1/2V8サルーンはジャガーMk2のボディをまとい、2ブランドの融合を示していたのだが。

「フロントグリルの形状は、ジャガーのものよりボディに合っていると思います。インテリアの質感は、デイムラーの方がベターです」。と今回ご登場願ったデイムラー・ソブリン2.8のオーナー、ダレン・ニューナムが話す。

2台に共通する表現できない落ち着き

エンブレムを付け替えたモデルの中で、ソブリンは比較的成功した方だといえる。ベントレーT1とロールス・ロイス・シルバーシャドーの関係性のように、ジャガーはXJシリーズを上手に展開させている。

同時期に英国へ姿を表した、サルーン2台を並べてみる。デイムラー・ソブリンとボルボ164とに共通することは、表現できない落ち着きを漂わせていること。

白のデイムラー・ソブリン2.8とクリーム色のボルボ164
白のデイムラー・ソブリン2.8とクリーム色のボルボ164

ソブリンは、ウィリアム・ライオンズ率いるジャガーの優雅なコーチワーク技術を映し出している。「ソブリン・シリーズ1のデザインはオリジナル。ここから後に展開していったんです」。とニューナムが説明する。

ボルボ164のスタイリングは、フォーマルでありながら真面目すぎない。長いボンネットの後ろに細いピラーが伸び、バランスが良い。フロント周りの造形はとても特徴的だ。

「スカンジナビアンなミニマリズムは、当時すでに存在しています。多くの人が164の姿を楽しむように見てくれます」。と笑顔を見せるのは、今回のボルボ164のオーナー、マーク・ユーレット。

この2台で、対象的な部分はインテリアだろう。デイムラー・ソブリンの車内は1970年代の紳士が集まるクラブ的。ダッシュボードには見慣れたメーター類とスイッチが並び、上質な日常を匂わせる空間に仕上がっている。

ヒーターは良く効き、スターターボタンではなく、キーを捻ってエンジンを目覚めさせられる。「ダッシュボードは後のXJとは異なります。レイアウトはシンプルで、後期モデルのような安っぽいプラスティックもありません」

この続きは後編にて。

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