【イエローバードの再来以上】ルーフCTR アニバーサリーへ試乗 1200kgに710ps 後編
公開 : 2021.02.22 19:05
1980年代の伝説、イエローバードの再来といえるルーフCTR。カーボン製シャシーとボディを備える、最高速度375km/hのモンスターを英国編集部が評価しました。
ハーフスロットルでも深刻なほどに速い
CTRの挙動は落ち着きにあふれている。運転席からの優れた視認性が心地いい。3年間に及ぶルーフによる綿密なチューニング成果を、ドライバーは思う存分楽しめる。
穏やかなエンジンの振る舞いは、右足の加減で一変する。ルーフに乗っているからには脳みそを目覚めさせ、しっかり実力を引き出さなくてはいけない。
変速フィールは、筆者の経験上で最も引き締まったものではないものの、直感的に操れる。だが前側のゲート間隔が狭く、ハイスピードの運転に夢中になっていると、3速を選びたいのに5速に入れてしまうことがあった。
ハーフスロットルでも深刻なほど速い。走行中、5速に入れた状態でアクセルペダルを蹴飛ばしても、ドラッグレースの発進時のように加速し始める。正しく扱えば、胸のすくようなワープ感を味わえる。アリエル・アトムを思い出させるように。
エンジンは極めてパワフルで、ターボの後押しも野蛮なタイプではなく、優しい方。パワーデリバリーは、トップエンドまでリニアでレスポンシブ。先代911 GT3のようなエンジンサウンドがいつも一緒だ。
不必要なヒヤヒヤ感はない。トラクションは素晴らしく、駆動系の遊びは最小限。アクセルペダルのストローク量はふんだんにある。気がつけばCTRと一体になり、異常といえるパフォーマンスが違和感のないものになっていく。
ハンドリングへ意識が向かい始める。もちろん、710psに迫った状態でのCTRの扱いは、簡単ではない。
空気が壁のように立ちはだかる330km/h
ミドシップのようなバランスに優れた操縦性を備え、自然でしなやか。ドライバーが悪ふざけをしようと試みると、911らしいリアエンジンの特性が顔を出す。
つま先でブレーキペダルを踏むまで、アクセルペダルの上下にあわせてボディが反応。特定の領域に踏み込むと、鮮明に活き活きとした挙動を楽しめる。
コーナーでの安定性も凄まじい。貴重な開発車両を、思う存分振り回すことはしなかったけれど。
CTRを煮詰めていく過程で、ルーフは装着タイヤをミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2からダンロップ・スポーツマック・スレース2へスイッチした。エッジが効きすぎ、反応が過剰だったらしい。根底にある神経質さは、確かにまだ残っている。
CTRの特性は、ダンパーの適正な設定と繊細なステアリング、フラットな姿勢制御とが織りなしている。ここへわずかなフィードバックを追加すれば、世界一級のスーパーマシンとなるだろう。
高速域で運転すれば、コンパクトで正確なクルマという感覚が強くなる。一方でパワーは過剰といえるほどで、心地いいとは感じないほど俊敏にも感じられた。
クルマの実力を確かめるべく、CTRに最適な速度域の道へ踏み入れる。かつて、マクラーレンF1のドライバーが感じたことを、理解するような体験が待っていた。
ZF社製のMTで7速を選び、330km/hで走行中にさらにアクセルを踏み込む。アウトバーンを包む空気が壁のように立ちはだかる。ドイツの豊かな森に、激しくガソリンを撒き散らすようだ。