【なぜ?】新型ホンダ・ヴェゼル大きく変わった背景 次世代ホンダの象徴になるか
公開 : 2021.02.22 05:45 更新 : 2021.02.22 07:07
F1なきホンダのブランド戦略は?
このようなコンパクトクロスオーバー市場の変化と、ホンダの国内市場でも販売への期待も踏まえて、ヴェゼルの進化が検討された。
最も大きなことは、ホンダというブランド自体の変革だ。
辛口の自動車評論家らは2000年代に入ってから「ホンダの顔が見えない」といった表現をよく使うようになった。ホンダの自動車開発の目指す方向が不明瞭だ、という意味だ。
こうした声が出るのは、ホンダが「技術はひとのために」(創業者:本田宗一郎氏)という基本理念を掲げ、F1を筆頭とするモータースポーツと関連する「走りの良さ」がホンダの真骨頂だという商品イメージが強いことに起因する。
また、ホンダの役員らと意見交換すると「ホンダは本来、エンジン(原動機)中心の会社である」とも表現することがある。
実際、四輪車に加えて二輪車、そしてライフクリエーション事業部が所管する小型発電機や農耕機を加えると、ホンダは世界トップ級の原動機サプライヤーである。
それが、世界的な電動化シフトや、人々のクルマという商品に対する考え方の変化などによって、ホンダがこれから目指すクルマの在り方について、まだ十分に周知されていない印象がある……。
次世代ホンダの象徴になるか?
そうした中で登場した新型フィットは、ライバルのトヨタ・ヤリスが、WRC(世界ラリー選手権)でのGRヤリスをイメージリーダーとする商品戦略を打つのとは対称的に、「ここちいい」というフワフワっとした商品訴求手法を用いている。
新型ヴェゼルについても、オンラインでの世界発表の内容は、新しいライフスタイルを念頭に置いた、抽象的な言葉が多く並んだ印象がある。
いま、明らかにホンダはブランドイメージを大きく変えようとしており、こうした転換期において、新型ヴェゼルの商品企画について市場から賛否両論の声が出ることを、ホンダとして十分に承知していると、筆者は思う。
ブランド戦略のみならず、モノづくりの観点からホンダは大きく変わろうとしている。
2020年4月1日付で本田技研工業(ホンダ本社)と本田技術研究所が四輪車量産体制を事実上、一本化した。時期的に、新型ヴェゼルはこの組織変革の前に商品企画と量産開発が始まったとはいえ、日本市場を含めた急激な電動化シフトや、コロナ禍での人とクルマとの関係性の変化などを、新型ヴェゼルが世に出るギリギリまで、マーケティング戦略を主体にさまざまな調整が進んだはずだ。
新型ヴェゼルは、まさに「いまのホンダ」、そして「これからのホンダ」を象徴するクルマなのだと思う。