【業態変わる?】出光興産EV参入で見えてきたガソリンスタンドの未来
公開 : 2021.03.18 05:45
石油需要2050年には7割減?
2050年に向けてカーボンニュートラルなど、脱炭素化社会の実現に向けて、アジア太平洋地区の石油需要が経済成長によって増えてしまうのが、シナリオ1「にわか雨」。
次いで、需要横ばいのシナリオ2「むら雲」、需要減少のシナリオ3「虹」、そして劇的な需要減少のシナリオ4「碧天」という4つだ。
そのうえで、最も可能性が高いのがシナリオ3だと想定し、より具体的な戦略を示している。
日本の場合、2017年を基準として、2030年時点で石油需要は3割減、2040年で5割減、そして2050年には7割減という、ガソリンスタンド経営の視点でみるとかなり厳しい数字を提示している。
2030年代には一気にクルマの電動化が進むと予測するも「ガソリンスタンドが一気に電気供給スタンドになるというイメージではない」(出光興産:木藤俊一社長)という。
菅政権が推進する「グリーン成長戦略」での「2035年までに新車100%電動化構想」でも電動車にはハイブリッド車とプラグインハイブリッド車の割合がかなり高いと予想され、そうなれば消費量は減ってもガソリンの需要はある程度は安定的に確保される。
出光興産は「ガソリンスタンドの新たなる姿」を段階的に提案しようとしており、その中に今回発表した超小型モビリティを活用したビジネスが含まれる場合もあるというのだ。
ガソリンスタンドではなくなる?
出光興産は先に合併した昭和シェル石油をあわせて、全国に約6400か所のガソリンスタンドがあり、今後はアポロステーションとして段階的に生まれ変わる。
既存のガソリンスタンド事業は、燃料油の販売を主体に修理、車検、中古車販売、レンタカーやカーシェアなどがあるが、ここに超小型モビリティを活用した、いわゆるMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)を組み込む。
どういったサービスと連携するかは、地域の社会状況に応じて、例えば介護支援など高齢者向けなどさまざまなケースが考えられ、それをアポロステーション事業全体の中で総括する。
また、すでに実用化されているコンビニやコーヒー軽食店などとの融合のほか、ピザのデリバリーサービスや、コインランドリー、ネットでの購入品の受け渡し場など、地域住民のライフスタイルの変化に応じて、地域生活の拠点化を進める。
ただし、こうした企業活動を俯瞰すると、地域の小規模商店が大型商業施設の出店により経営不振に陥るように、ガソリンスタンドの多様化が結果的に、小規模商店に与える影響が出る場合もあるだろう。
そうした点も十分考慮し、地域の継続的な発展、または現状維持を出口戦略とし、新たなガソリンスタンド事業と地域社会との共栄共存を常に意識する必要があると思う。