【羊の皮の狼サルーン】ヴォグゾール(オペル)・ロータス・カールトン 30年目の英国試乗 後編
公開 : 2021.03.04 19:05
古いオペルのサルーンにしか見えない、ロータス・カールトン。プレイステーションのゲームでご存知の読者もいるでしょう。英国編集部が誕生30周年を祝い、試乗しました。
高速で長距離をこなすためのクルマ
今回ロータス・カールトンで向かうのは、ロータスの本社がある英国東部のヘセル。949台のチューニングを受けたカールトンが、一般道へ旅立った場所でもある。当時、プロジェクト・マネージャーを務めていたティアールは、毎週何度も足を運んだという。
ちなみに最後のロータス・カールトンになる予定だった950台目のクルマは、ドイツ・リュッセルスハイムのオペル工場でダメージを受け、作られることはなかったそうだ。
30年前のオペル・オメガは大きなセダンだった。しかし全幅は1.8mしかなく、細いピラーがルーフを支え、今見るとずっと小さく感じられる。
ステアリングホイールもクラッチペダルも、とても重い。ステアリングの位置はチルトしか調整できず、腕を伸ばした運転姿勢を強いられる。走り始めると、高速で長距離をこなすためのクルマだということがヒシヒシと伝わってくる。
6速MTはストロークが長く、ギア比はロング。シボレー・コルベットに用いられ、アストン マーティンなど少量生産のクルマにも採用された過去がある。シフトフィーリングは心地良い。
最高速度は5速目で到達する。6速に入れたまま、1000rpmの回転数を保ち75km/hくらいで走ることもできる。
部分的には年代を隠せない。駆動系からは、わずかに振動が出ている。新しいデファレンシャルに交換する日も遠くないだろう。ボディが古くなりスポット溶接がゆるくなると、クラシックカーはどれも似た老化を感じさせてくる。
エンジンの魔力は変わらない
ステアリングを操作すると、クルマが反応する前にボディやブッシュ、ジョイント類が歪み、たわむ。年齢を重ねたオリンピック選手のように輝きは残っているが、全体的に鈍く遅くなっていることがわかる。
しかし、3.6Lツインターボ・エンジンの魔力は変わらない。ターボラグは最小限。6気筒ではなく、12気筒のように滑らかに力強くカールトンのボディを引っ張る。
現代基準でも、充分に速い。30年前はとてつもなく速く感じられた。でも、そこれで充分ではなかったようだ。
ティアールが懐かしむ。「多くのユーザーが、モディファイを加えました。最高出力を382psから500ps、600psへと引き上げていました」
「グローブボックスを外すと、ロータスのステッカーが貼られたECUがあります。ステッカーを剥がすと、保証が無効になるという警告付きです。点検や保証サービスでディーラーに戻って来ると、多くのロータス・カールトンが改造されていたものです」
「標準のロータス・カールトンのエンジンは、とても良いフィーリングでした。改造されていたクルマのエンジンは、くたびれていてうるさい。中を見なくてもわかりましたよ」
今回試乗しているカールトンのエンジンは、まだ標準のまま。レストモッドする際、ボディ剛性を高めてステアリングのレシオを変えて、シートの位置を低くするまではわかる。でも、エンジンには手を加えない方が良いだろう。