【驚くほど深い能力】ポルシェ911カレラ(最終回) 長期テスト クルマとの相互関係
公開 : 2021.03.07 09:45 更新 : 2021.07.12 18:55
992型に生まれ変わったポルシェ911。初代に通じる純粋さを残すスポーツカーです。最新のポルシェは最良なのか。素の911カレラを通じて魅力を探ります。
積算1万2151km 最も有名なスポーツカーの1台
世界で最も有名なスポーツカーの1台といえるポルシェ911。長期テストでは、ほぼ素の状態に近いカレラを検証してきた。
ポルシェ911は、よく知っているクルマのように乗りやすい。一方で1台だけで過ごしていると、素性の良さが見えなくなりがちだ。
楽しいことはわかっていても、どれだけ楽しいのか、毎日の短距離移動がどれだけ活き活きしたものになるのかは、比較しないと見えにくい。いかに精巧に設計・製造されているのかも、感じ取りにくい。慣れとはそいうものだと思う。
長期テストでは、最高のスポーツカーを普段使いするだけでなく、どの程度の内容が本当に必要なのかも確かめてきた。
ポルシェは、911のボディ・バリエーションの拡充に余念がない。同時に質素なモデルを選んでも、オプションの追加で結果的に金額が釣り上がることも珍しくない。長期テストのカレラでも、オプション金額は車両代の10%に届いている。
短くも素晴らしい911との暮らしだったが、このカレラの内容ほどもいらないかもしれない。走りに関係あるオプションは、1145ポンド(16万5000円)のカレラSホイールと1844ポンド(17万円)のスポーツエキゾーストくらい。
2つのオプションが装備されていなくても、幸せにポルシェ911と過ごせたと思う。残りのオプションは、見た目的な部分や快適機能に関わるもの。オーナーの好みに依存する部分だ。
強い印象を与える911のカタチ
最もシンプルな911を選んでも、よりパワフルでゴージャスな911と同じくらいの特別感があると思う。英国価格はそれでも8万2795ポンド(1192万円)もする。乗っていて、ほかのクルマに引け目を感じることもない。
たとえ運転しなくても、一度乗れば多くの人に確かな印象を残してくれる。特にそのきっかけとなっているのが、ボディのカタチ。911の見た目は、いつも911。当然のことのように。
911を運転する時間が長くなるほど、その印象は強いものになっていく。ボディもインテリアも、細部まで作り込みは素晴らしい。
立体的なエンブレムが飾られた、リアの造形豊かなプロポーション。きれいに整えられた面構成と、ブレーキランプのデザイン。こんなデザインのテールライトを持つクルマは、ほかに例がないと思う。
見た目で素の状態と違っていたのは、カレラSのホイール。フロントが20インチで、リアが21インチと大きい。かっこよく見えるし、乗り心地に大きな影響はないようだ。
逆にわずかなオプションが付いていたことで、本当に必要なオプションは何なのか、モデル展開も含めて考える刺激を与えてくれた。特に長期テスト車のボディカラー、アベンチュリン・グリーンは、予想以上のものだった。
グレーがかったダークグリーンが、これほど強い印象を与えてくれるとは思ってもみなかった。何より、控えめな主張が気に入った。周囲に溶け込み、不必要に視線を集めることもない。汚れが目立ちにくい点もうれしい。