【驚くほど深い能力】ポルシェ911カレラ(最終回) 長期テスト クルマとの相互関係
公開 : 2021.03.07 09:45 更新 : 2021.07.12 18:55
クルマとの相互関係が生む丁度いい深み
AUTOCARの英国読者の中にも同じアベンチュリン・グリーンでカレラSを注文し、大正解だったと感じている1人がいる。911を知っている人だからこそできる、懸命な選択に思える。
運転するほどに、911の魅力を知ることができた。直接的な楽しさや心地よさには、丁度いい深みがある。その核にあるのが、クルマとの相互関係にあると思う。
スターターのスイッチを右に捻り、エンジンを始動する瞬間からクルマとの関係性が始まる。フラット6のノイズでも、始動直後は一番心に響くものだと思う。スポーツエグゾーストを付けていても、911の音響的な個性は以前より薄められているから。
カレラは周囲を威圧するようなクルマではない。ドライバーと一体になり、交差点を曲がるだけでも充足感を与えてくれる。
エントリーグレードの911ですら、最高出力は385psもある。2速か3速でアクセルを踏み倒すと、運転免許が存亡の危機に陥るほどのパワーだ。でも、50km/hから110km/hへ加速する高速道路の合流ですら楽しい。
郊外の開けた道へ出れば、感心するほどの落ち着きとインタラクティブ性で、911を深く味わえる。軽快な変速感と、気持ちよく吹け上がるフラット6。すべての操縦系の重み付けは理想的で、快適でありながら鋭く正確にノーズは向きを変える。
ステアリングホイールを握る手のひらと、シートへもたれる背中には、素晴らしいフィードバックが伝わってくる。唯一気になるとすれば、高速道路などで大きいロードノイズくらいだった。
驚くほど深遠な優れた能力
短い期間だったが、多くの体験をさせてくれた。びしょ濡れのカースルクーム・サーキットでは暴れ馬のようだったが、あの状況では驚くような結果ではないだろう。
シルバーストーン・サーキットでは最新のシボレー・コルベットC8に対峙した。ドリフトもしやすい、自由度の高さを改めて確認させてくれた。家族4人で短距離ドライブを楽しんだり、長距離を走り込んだ同僚もいた。
最後に改めて触れたい911のストロングポイントは、信頼性や耐久性と、総合的な実力の高さ。長期テストの間、いつでもどこでも運転できると感じさせてくれた。これから新しいオーナーのもとへ行っても、思い出深いドライブを重ねていくことだろう。
ポルシェ911はとても特別なクルマだ。その深遠なほど優れた能力には、ただただ驚かされるばかりだった。