【シンプル】破格の「47万円」なぜ実現? 初代スズキ・アルトを振り返る

公開 : 2021.03.22 17:25  更新 : 2021.10.13 12:14

「低価格」は努力の積み重ね

いくら税制のスキを突いたボンネットバンタイプを生み出したとはいえ、当時の軽自動車の下限を大きく下回る47万円という価格を実現するためには涙ぐましい努力があった。

まずはグレードという概念を捨て、モノグレードとした。

スズキ・アルトバン
スズキアルトバン    スズキ

当時はスタンダードやデラックスなど、明らかに差別化を図るグレードを用意することでユーザーの購買意欲を掻き立てる手法が一般的だったが、これを廃止することで複数のグレードを作り分けるコストを削減し、生産効率を向上させたのである(のちに2シーターや4WDなどが追加されるが)。

そして、標準装備となるものを必要最低限ギリギリまで省いた。

キーレスなどがない当時は助手席側にもキーシリンダーがあるのが通常だったが、これを省き、ボンネットを開閉するためのケーブルワイヤーまでも省くため、ボンネットに備わるエンブレムを押してロックを解除する方法を採用していたのだ。

また、ウインドウウォッシャーも電動ポンプを使用せず、360cc時代に見られた手動のポンプで噴出するタイプとなっているなど、「あったら便利だけどなくても困らない」装備のほとんどが省かれていたのである。

さらに商用車登録とすることで、乗用車のような厳しい排出ガス基準をクリアしなくてもよかったため、従来モデルのエンジンをベースとした2ストロークエンジンを採用できたのもコスト削減に大きく貢献していた。

このように極限までシンプルさを追求することで驚異的な低価格を実現したアルトであるが、実はその精神は現行モデル(8代目)にも受け継がれており、商用車登録となるアルトバンは引き続きモノグレードとなり、荷物が中心となるリアのウインドウは開閉不可のハメ殺し。

ボディカラーはホワイトのみで、バンパーはペイントではなく材着色となっているという簡素っぷりなのだ。

その結果、いまや必須装備のエアコンを標準装備しながらも73万7000円と、圧倒的な廉価を誇っている。

記事に関わった人々

  • 小鮒康一

    Koichi Kobuna

    1979年生まれ。幼少のころに再放送されていた「西部警察」によってクルマに目覚めるも、学生時代はクルマと無縁の生活を送る。免許取得後にその想いが再燃し、気づけば旧車からEV、軽自動車まで幅広い車種を所有することに。どちらかというとヘンテコなクルマを愛し、最近では格安車を拾ってきてはそれなりに仕上げることに歓びを見出した、尿酸値高い系男子。

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