【復興と被災地】3.11東日本大震災から10年 インフラ整備と住民生活を考える
公開 : 2021.03.11 05:45
東日本大震災から10年を迎えます。インフラの整備は進みますが住民の生活は本当に復興したといえるのでしょうか。
震災によるインフラ被害と復興
復興庁の資料では、2018年度末までに被災地の住宅再建、防災集団移転、区画整理など「まちづくり」に関わる事業はほぼ終了したという。
防潮堤のかさ上げなど「海岸対策」は2019年度末までに計画の99%が着工し、66%の工事が完了する予定とされていた。また、震災と原発事故で不通になっていたJR常磐線も全面開通している。
被災3県(岩手県、宮城県、福島県)の製造品出荷額は震災前の水準まで回復。
東日本大震災により壊滅的な被害を受けた岩手、宮城、福島各県の沿岸部は交通インフラがほぼ復旧した。基幹産業の水産業の復興は先述の原発で影響が大きい。その一方で、交通インフラはほぼ震災前の水準に戻った。
復興庁によると、2020年9月末時点で直轄国道は1161kmが開通し完全復旧。県や市町村が管轄する道路も99%まで復旧工事が完了した。国が進める自動車専用道の復興道路・復興支援道路(総延長584km)も完成が近づく。
青森と福島を結び、国が2兆円を投じて整備する復興道路・復興支援道路が全線開通すれば、車で8時間半かかった八戸―仙台間を5時間余りで結ぶ。東北地方整備局によると、20年12月までに約8割の458kmが開通した。
津波で大きな被害が出た沿岸部について、国は20年度末までに青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の6県621地区で防潮堤や護岸の整備を終える方針で、すでに計画の7割超が完成している。
徐々に進む市民生活の回復
いまもなお、避難生活者は4万人以上いる。毎年「災害関連死」(震災後の避難生活による体調悪化、自殺などを含む)も2桁ペースで増えている。
一方で、災害公営住宅は計画の99%にあたる約3万戸が完成した。津波で甚大な被害を受けた宮城県石巻市では2020年1月、プレハブ型仮設住宅に入居者の退去が完了した。
ただ、今でも仮設住宅に暮らす被災者もいる。2019年1月時点では、その数は約3000人とピーク時のおよそ3%となっている。
福島では「帰還困難区域」が残る。避難指示が解除された地域では住民が戻る動きも出ている。
福島第1原発の立地自治体で全町避難が続いていた大熊町では、避難指示の一部が解除され、一部住民が帰還した。
また、2020年3月にはJR常磐線の全線開通にあわせ、双葉町や大熊町、富岡町でも、避難指示が解除された。
福島県によると、2020年2月の時点で約4万人が避難生活を余儀なくされており、うち約3万人が県外で暮らす。県内の住宅、公共施設などの除染もおおむね終了し、空間放射線量は低下傾向にあるという。