【ベスト911を探せ】ど真ん中はドナタ グレードと装備を徹底比較 前編
公開 : 2021.02.27 11:05 更新 : 2021.07.12 18:47
気の遠くなりそうな992世代の911のバリエーションから、理想の走りを味わえる1台を選びたい。そんな英国編集部の野望を、素のカレラからターボSまで一気乗りして叶えようという企画。購入検討中なら必見です。
あまりに多すぎる選択肢
1960年代初頭、ポルシェ911は901と名乗った。プジョーの横槍が入り、商標権の都合で名称変更することになったが、その頃のパンフレットを手に取ったなら、あまりのシンプルさに驚くはずだ。
ハンドブレーキのドラムサイズが180mmなどという、当時ならではの言及もあれば、エンジンが車体後部、リアアクスル後方に積まれているという、それこそ今ならわかっていて当然と言いたくなる情報も記載されてはいる。
数字の欄もうんざりするほどある。だが、バリエーションはない。スペック一覧の末尾に、5速MTのギアリングが変更できる旨の注釈がある程度しか、選択の幅は用意されていなかった。それ以外のメカニカルな部分は、すべて同じセット内容だったのだ。
それが2021年の911カレラにまったく当てはまらないことは、いまさら言うまでもないだろう。バルブキャップの仕上げまで選ばされるなんて、冗談みたいな話だ。さもなければ、シートの柄も選べるわけだが、それ以前に選ぶべきメカニズムが数多くある。
つまり、見た目はそっくりでも、走りの異なる911が生まれる可能性があるわけだ。そして、絶対にというわけではないが、ターボ系やGT系でなくても非常に高額になる可能性もある。
まずは原点を知る
素のカレラはもちろん後輪駆動で、PDK仕様が8万3000ポンド(約1162万円)、対するカレラ4Sは、シャシーとパワートレインに関するオプションをすべて装備すると11万8000ポンド(約1652万円)。つまり、差額はアルピーヌA110が買えるほどになる。
断定するのが難しいのは、素のモデルとオプション満載のモデルとの妥協点だ。言い換えれば、支払いに見合う価値があるのはどんな仕様なのかということになる。
幸いにも、英国ポルシェの広報車に、ほぼオプションの備わらない車両が加わった。こんな機会は滅多にない。まずありえない話だ。
結局、より速く俊敏なクルマに仕上げるテクノロジーの追加には、人間抗いがたい。ディーラーでは、それがリセールに影響するからと薦めてくるだろうが、それも事実である。
現実的には、正真正銘ベーシックな911などというものは、机上の空論に過ぎない。そんなものを買うユーザーはまずいないし、ポルシェがそんな仕様をテストしたいメディアなど存在しないだろうと想定するのも無理のないことだ。
もちろん、実際にはそんなことはない。少なくとも今回の白いカレラは、選びたくなるさまざまなオプションの効用を査定し、理想的な911を見つけ出すための試金石になってくれる。