【上級志向への一歩】アルピーヌA110リネージGTへ試乗 400台限定 1.8L 4気筒 前編
公開 : 2021.03.03 08:25 更新 : 2021.05.13 12:13
フランス流の洗練が与えられた、ミドシップ・スポーツのアルピーヌA110。上級志向が目指されているものの、充分とはいえない様子。英国編集部が評価しました。
純EVメーカーへ移行しつつあるアルピーヌ
フランスのアルピーヌは最近忙しい。モータースポーツの最高峰、F1への参戦を発表しただけではない。ジャガーと同様に、純EVのみを生産するブランドになることを決定したばかり。
目下、エントリーグレードのハッチバックとクロスオーバー・モデルの計画が進められている。ロータスと共同開発される、よりスポーティなモデルも進行中だという。
そんなアルピーヌにとって、A110に追加となったリネージGTの発売は、小さな動きではあるだろう。4気筒エンジンのみで駆動される小さなスポーツカーは、もうすぐアルピーヌのカタログから永久的に消える運命にある。恐竜時代のクルマとして。
限定400台が製造されるアルピーヌA110リネージGTの英国価格は、5万9410ポンド(855万円)。現在のアルピーヌの中では、上級志向の最も高価なモデルに位置づけけられる。今後のブランドの方向性を考えるうえで、議論となる部分かもしれない。
親会社となるルノーには、1つの目標がある。アルピーヌによるル・マンへの参戦など、モータースポーツ活動に必要な資金を、ブランド内でまかなえるようにするというものだ。
それを実現するには、価格の高いリネージGTの存在が不可欠。より多くの台数を販売し、利益を上げる必要がある。
優れた技術にはプレミアムな設えが必要
現在のアルピーヌが抱える課題は、A110の販売が伸びず損失に近い状態を生み出していること。その原因は、ダブルウイッシュボーン・サスペンションを備えるオール・アルミ製のスポーツカーを、ゼロから開発したことによる。
莫大な開発費用を投じたA110が、エントリーグレードのピュアなら4万8000ポンド(691万円)から英国では買えてしまう。ここに問題がある。
高めの価格を付けて優れた収益を得るには、高い走行性能に加え、プレミアムな設えも必要になる。それが現在のスポーツカーでは、売り方の主流といえる。量産車として世界水準のテクノロジーだけでなく、ラグジュアリーさも欠かせない。
これを一番上手に展開しているのがポルシェ。ロータスがフェラーリを追い越せない理由でもある。この課題を解決する手段としてアルピーヌが生み出したのが、リネージGTだ。
反面、英国価格が約6万ポンド(864万円)もする認知度の低いブランドのスポーツカーに載るエンジンが、直列4気筒で充分なのかという疑問はある。恐らくアルピーヌの製品プランナーも、悩んだだろう。
リネージGTは、安価なルノーのハッチバックと多くの部品を共有しつつ、ラグジュアリーなアプローチを上手に融合させているようだ。アルピーヌを、どこまで上級ブランドに押し上げることにつながるだろうか。