【上級志向への一歩】アルピーヌA110リネージGTへ試乗 400台限定 1.8L 4気筒 後編
公開 : 2021.03.03 19:05 更新 : 2021.05.13 12:14
フランス流の洗練が与えられた、ミドシップ・スポーツのアルピーヌA110。上級志向が目指されているものの、充分とはいえない様子。英国編集部が評価しました。
高級感が高められたインテリア
アルピーヌA110リネージGTのエンブレムは、ホイールと同色の淡いゴールドに染められる。それ以外、専用ホイールのほかに見た目上の変更はないが、仕上がりは効果的。ランドローバーなどが用いる鮮やかなカッパー・カラーより筆者好みだ。
全体として、A110リネージGTはこれまで以上に洗練されて見える。価格が高いだけのことはある。
通常のアルピーヌA110でも、クルマに詳しくない人から値段を聞かれ、6桁ポンド(1440万円)しないことを告げると驚かれることがある。ブランドはあまり知られていなくても、標準のA110でも魅惑的な雰囲気があるのだろう。
インテリアは、上級志向のリネージGTでは特に重要。通常のA110の安っぽいプラスティック製部品や、シフトパドルの形状など人間工学的な設計は、ライバルから少し劣る部分だった。
リネージGT用のプリーツ入りレザー・バケットシートは、とても快適。着座位置は若干高くなるがヒーターも内蔵され、キャラメル色も高級感がある。ダッシュボードはステッチ入りのレザーで仕立てられ、金属風仕上げのトリムパーツも美しい。
一方でメーターパネルのカウルやエアコンの送風口、センターコンソールには、銅のフレークが散りばめられたように見えるカーボンファイバーが用いられている。これが若干安っぽく見え、意図通りの雰囲気には感じられなかったのが残念。
どんな道でも呼吸を合わせるように走る
といっても、車内の基本的な部分は変わっていない。期待以下のプラスティック製パネルやスイッチ類も残っている。もう少し焦点を絞った改善を施せば、華やかな雰囲気を一層得られるだろう。
もし筆者がアルピーヌの開発者なら、アルファ・ロメオがジュリア・クアドリフォリオに与えた内容を参考にするかもしれない。もっと幅広い色展開を用いて。
ドライビング体験は、従来のアルピーヌA110と同様に楽しい。フロントノーズはとても軽く、積極的に向きを変えていける。どんな地形に敷かれた道路でも、呼吸を合わせるように走らせられる。
ドライバーに与えられた調整しろも広い。このクラスでこれほど自由な体験を得られるクルマは、ほかにない。
シャシーはポルシェ718ケイマンほど安定性で勝るわけでも、懐が深いわけでもない。湿ったワインディングを走るなら、少し気持ちをリラックスさせ、落ち着いた操作が求められる。そうすると、一体感はさらに高まる。
リア・サスペンションに掛かる負荷が増大しても、コミュニケーション力は変わらず、素直さは失わない。こんなダイナミックな挙動を備えるモデルは、ほとんどない。素晴らしいのひとこと。
上級志向のアルピーヌA110リネージドGT。興味を抱いた読者がいるかもしれないが、残念ながら生産予定の400台はすべて、すでに商談が進んでいる。
英国価格6万ポンド(864万円)近い4気筒モデルが、多くの人に納得してもらえていることを示している。400台という希少さも、人気を得られた理由だろう。