【復活を夢見たエラン】ビーガンチューン・エバンテ140 TC オリジナルのツインカム 後編
公開 : 2021.03.13 17:45
中毒性のあるエバンテの走り
0-97km/h加速は6.4秒だという。実際はそこまで速くは感じられないが、テンポよくシフトアップできる。車重は720kgを越えるようだが、それでも充分に軽量な部類。
スタートしてから数秒後には、運転免許が危うくなる速度に到達する。爆発するように突き進みながら。トルクフルな4気筒エンジンは、ドライブトレインとの相性も抜群。変速も気持ちよく決まる。
キャブレター・エンジンは低回転域があまりお好みではないものの、4000rpmを超えた辺りでサウンドが輝き出す。そのまま音質を磨きながら、6000rpmまで吹け上がる。
バックボーンシャシーを失ったエバンテだが、ロータスのようにカーブの続く田舎町を駆けていく。むしろ、車齢から想像する以上に安定して路面を掴みづつける。サスペンションは引き締められ、ずっと現代的なタイヤを履いているせいだろう。
接地面積は増えているが、小さなステアリングホイールには沢山の感触が伝わってくる。操舵感は重く、コミュニケーション力は豊かだ。
エバンテをハイペースで走らせる楽しさには、中毒性がある。30年が経過した今、スポールディングの町で100台程度しか作られなかった理由を考えるのが難しいほど。
1989年、ロータスは2代目としてエランを復活させた。しかしM100系は、エランという名前の別のモデルに仕上がっていた。バックボーンシャシーを備えていたが、ボディは大きく重く、FFになっていた。
改めて実感する小さなロードスターの魅力
2代目エランは、ロータスの精神より、野心を示すようなクルマだった。だがエバンテはロータスの精神に忠実だ。エランの問題を解決し、独自性を追加している。いくつかの不具合も。
ビーガンチューン・エバンテが多く売れなかった理由は少なくない。煮え切らないルックスもそうだし、VTAエンジンの信頼性にも疑問があった。そしてマツダからは、初代ロードスターが発表された。
オリジナルのエラン自体も足を引っ張った。1988年のエバンテ140TCの価格は1万5000ポンドほど。中古のロータス・エラン・スプリントの倍もした。価格上昇を招くクラシックカー・ブームは、訪れる前だった。
今では、エラン・スプリントは4万ポンド(576万円)以上はしてしまう。しかしビーガンチューン・エバンテ140 TCなら、まだ1万5000ポンド(216万円)を超えるくらい。
新車当時とさほど値段は変わらない。痛快なパンチ力を持つ小さなロードスターを楽しむ時代が、遅ればせながらやって来たようだ。
ビーガンチューン・エバンテ140 TC(1987-1993年)のスペック
価格:1万4887ポンド(新車時)/1万7000ポンド前後(244万円/現在)
生産台数:106台
全長:3720mm
全幅:1490mm
全高:1130mm
最高速度:212km/h
0-97km/h加速:6.4秒
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:720kg
パワートレイン:直列4気筒1699cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:142ps/6500rpm
最大トルク:17.8kg-m/3000rpm
ギアボックス:5速マニュアル