【賛否両論】新型ヴェゼルのデザイン ヒットの初代を踏襲しないワケ

公開 : 2021.03.02 05:45  更新 : 2021.10.13 12:04

ヒットした初代の面影なき新型ヴェゼル。ライバル乱立の市場で生き残るために「攻め」の変更をしたと筆者は考えます。

ヒットの初代デザインを踏襲せず

text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

まさかこうなるとは……。

公開された新型ヴェゼルのスタイリングを見てそう感じたのは、筆者だけではないだろう。

新型ホンダ・ヴェゼル
新型ホンダヴェゼル

ヴェゼルはホンダのコンパクトSUVだ。2013年に発売されるやいなやヒット街道を走り出し、2014年には新車販売台数でSUVの1位を獲得。続く2015年と2016年にもそのポジションをキープし、3年連続でSUVの頂点に輝いた。

その人気は日本国内にとどまらず、登場以来グローバルでは約384万台を販売。いまやホンダにとって欠かすことのできない大ヒットモデルである。

初の全面改良となるフルモデルチェンジの正式発表はもう少し先の4月を予定しているが、先だってスタイリングや概要が公開された。

それにしても……である。

とにもかくにも驚いたのはデザインだ。

マツダCX-5」やトヨタハリアー」のような雰囲気を持つことからネット上で「CXハリアー」とも呼ばれはじめたその姿に、初代の面影は一切ない。

コンパクトSUVとは思えないほど伸びやかなプロポーションは素直に優雅さを感じられるし、高級感だってある。

なにより、コンパクトSUV(サイズはまだ公表されていないが先代と大きく変わることはないようだ)ながら、大きく立派に見えるのが見事。コンパクトSUVにもかかわらず、このスタイリングがもたらす車格感はちょっとスゴい。

一方で気になるのは、初代が大成功したにもかからず、スタイリングを全面刷新する必要性が果たしてあったのかという点だ。

デザインの大幅な路線変更は、市場から好意的に受け入れられればいいが、もしそうではなかった場合は販売減に直結する。

ヴェゼルのように従来型が人気だった車種は既存ユーザーの新型への買い替えも多く期待できるから、一般的にはコンセプトを「守り」とする判断になりやすい。

しかし、ヴェゼルの場合は、守りに入るのではなく革新を選んだのである。

初代ヴェゼルが売れたワケ

その答えを探るヒントとなるのは、コンパクトSUVを取り巻く環境の変化だろう。

ヴェゼルは「Bセグメント」というクラスに属するが、BセグメントクロスオーバーSUVが大ブレイクするきっかけを作ったのは2010年にデビューした日産ジュークだ。

初代ホンダ・ヴェゼル
初代ホンダ・ヴェゼル

ジュークは、日本でも欧州でも大ヒット。

その魅力は個性あふれるデザインだったが、パッケージングは割り切りが多く、後席や荷室は狭かった。ただし、それは非難されることではなく、ジュークは何よりデザインありきの企画だから奇抜なデザインが成り立ったのだし、ユーザーもそれを受け入れていた。

しかし、後発ライバルがデビューするなかで、Bセグメント・クロスオーバーSUVのなかでも、ジュークとはちがう流れも出てきた。

それはスタリングよりもパッケージング、ストレートにいえば後席と荷室の広さを重視したタイプだ。初代ヴェゼルはその代表格といっていい。

初代ヴェゼルのパッケージング効率は素晴らしいものだ。わずか4.3mほどの全長に、ゆったりした後席空間と393Lの荷室を確保。

デビューから7年が経過しフルモデルチェンジを迎えようというこのタイミングでも、後席の広さはクラスナンバー1、荷室もトップの日産「キックス」に僅差で劣るものの、他車を引き離しトップクラスであるのだから立派である。

初代ヴェゼルの大ヒットには、この広い空間が大きな役割を果たした。

ヴェゼル登場以前は「広さが期待できない」とされていたこのジャンルに「実用的な広い室内」をもたらし常識を変えたことが初代ヴェゼルのヒットの方程式といえよう。

実用性を求める多くのユーザーが選んだことで、ヴェゼルは大きな支持を得たのだ。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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