【賛否両論】新型ヴェゼルのデザイン ヒットの初代を踏襲しないワケ
公開 : 2021.03.02 05:45 更新 : 2021.10.13 12:04
初代ヴェゼルの課題は「見た目」?
ならば、その路線を継承すればいいではないか?
それは正論なのだが、BセグメントクロスオーバーSUV市場を取り巻く環境の変化が話を難しくしたのだ。
一躍メジャーなジャンルとなった同市場はいま、車種が急激に増えすぎて飽和状態にある。
国産車だけでもトヨタ「ヤリス・クロス」「C-HR」に日産「キックス」、そしてマツダ「CX-3」もあり、輸入車のライバルも少なくない。
そんななかで存在感を見せていこうとしたときに、広い室内だけではアピール度が低いのだ。
やはり注目されるスタイルがあってこそ、市場で目立てるのである。ジャンルが熟成されていくなかで、ライバルが増えたからいまだからこそ、個性と見た目の華やかさがさらに重要になってくるのだ。
はっきりいうと、初代ヴェゼルの実用性は素晴らしかったが、見た目に華があるとはいえなかった。
それを変えようというのが、スタイルの刷新なのである。
長所「実用性」は犠牲にせず……
問題は、新型ヴェゼルに従来モデルユーザーが失望しないだけの実用性が備わっているかどうかである。
従来モデルの使い勝手に魅力を感じていたユーザーからすれば、いかに見た目が立派になっても実用性が低下していたらガッカリ以外の何物でもない。
しかし、結論をいえば、その心配はいらないだろう。
ホンダの公式ウェブサイトの次期ヴェゼルを紹介するページに、以下のように書かれている。
「リアからフロントにかけてのクーペのような流麗なフォルムと力強い足回りでデザイン性を高める一方、後席の空間性能とユーティリティを大きく向上。足元スペースや、前席との距離にゆとりを確保しながらリアシート背面の厚みを増し……(後略)」。
すなわち「空間は増している」と受け取れるのだ。
ホンダ自身、初代ヴェゼルのヒットの理由、そしてユーザーがヴェゼルに何を求めるかをしっかりと理解している。
だからこそ、そこは譲れない部分としてしっかりとキープ。そのうえで大胆なスタイリングで勝負をかけてきた。
それが、次期型で大きくデザインが変わる理由にほかならない。
このデザインで、従来型の使い勝手をキープしているならすごいことだと思う。
ライバル多きなかでどう生き残るか?
コンパクトクロスオーバーSUVの黎明期は、「個性的なスタイリング」や「とびきり実用的なパッケージング」などの特徴があればヒットを狙うことができた。
しかし、市場が熟成してライバルが増えたいま、そのどちらかだけでは勝てないのだ。
スタイリング優先で開発されたトヨタC-HRは一時期かなりの人気を誇ったが、現在はその人気も衰えている。
マツダCX-3の美しいデザインは誰もが認めるところだが、実用性は割り切られていて、人気は長続きしなかった。
日産は見た目重視で開発したジュークの新型を日本で売るのをやめ、日本ではパッケージングに優れるキックスで勝負することにした(新型ヴェゼルとは逆パターンであるのが興味深い)。
そんななか、クラストップレベルの広い室内を死守しつつ、大胆なイメージチェンジをはかったヴェゼルがどこまで健闘するか、期待しながら見届けたい。