【カネではなく実力で勝負】フィル・ハンソン ル・マン優勝の実力とは 英国のゴールデン・ボーイ

公開 : 2021.02.28 08:05

課題は実力でシートを獲得すること

では、次は何をするのか?短期的には、答えは同じようなものになるだろう。スポーツカーのレーサーは、能力、経験、成績によってブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナと等級付けされているからだ。ハンソンは、シルバーからゴールドに移行したばかり。

現在、スイスの元DTMドライバー、ファビオ・シェラーが「ゴールデン・ボーイ」のハンソンとプラチナのアルバカーキに加わり、チームのシルバードライバーとして活動している。また、ハンソンは自身のELMSタイトルも防衛することになる。

フィル・ハンソン
フィル・ハンソン

長期的な展望としては、世界の耐久レースで最高の地位にあるル・マン・ハイパーカー(LMH)とル・マン・デイトナ・ハイブリッド(LMDh)クラスに目が向けられていることは明らかだ。

トヨタは今シーズンのハイパーカーカテゴリーでスタートを切り、2022年にはプジョーが参戦して、その後アウディがLMDhに、続いてポルシェが舞台に上がる。他にも多くのメーカーが追随する可能性がある。若いドライバーが長距離スポーツカーレースでキャリアを積むには素晴らしい時期だと言えるだろう。

「LMP2に居続けるのは理にかなっていると思う。LMP2は最も競争が激しいクラスで、年々成長しているからね。F1やDTMを含め、あらゆるところからドライバーを惹きつけている」

「僕は正しい場所にいて、自分を最高の選手と比較するには絶好の場なんだ。もし自分がそのトップにいると証明できれば、世界のトップに立っていることを証明することになる。そうすれば、メーカーが(LMHとLMDhに)参入してきたときに、自分の存在をアピールすることができると思う」

ハンソンには今、取り組むべき重要な課題がある。これまで彼のキャリアは裕福な父親に支えられてきたが、いつかは純粋な実力だけでチームと契約する必要がある。真のプロになるためには、レーシングドライバーとして生計を立てなければならないのだ。

「メーカーのドライバーリストに自分が載っているのは間違いないと思っている。あとはどれだけ上位にいて、自信を持ち続けることができるかどうかだ」

「若いということは助けになるけど、同時にデメリットもある。彼らと一緒に長いキャリアを歩むことができる反面、経験が少ない。それはトレードオフだ。でも僕は21歳で、すでにル・マンで4回レースをしてきたから、彼らが僕のパフォーマンスを見たら…ただ若いだけじゃないとわかってくれるだろう」

アウディ、プジョー、ポルシェ、トヨタなどのほか、カスタマーチームの可能性もある。ハンソンはこれまで高く速く飛んできたが、適切なブレークがあれば、彼の空高く伸びる軌跡は成層圏へと加速していくことになるだろう。彼がすべきことは「勝ち続ける」という、難しいことだけだ。それは彼自身もよくわかっている。

世間は彼を「過小評価」している

ユナイテッド・オートスポーツの共同創設者でありチームの代表でもあるリチャード・ディーンに、フィル・ハンソンがスポーツカードライバーとしてゴールドクラスにふさわしいかどうかを尋ねてみた。

「彼に対する一部の人々の意見にはイライラするよ。彼がレースを始めてまだ間もないから、勝手に推測をしてしまうんだ。フィルはルーキーで代役だと考えがちで、実際のデータを見ることもない。フィリペ(アルバカーキ)やポール(ディ・レスタ)と並んで、彼がどれだけ自分の力を発揮してきたのかを知ろうとしないんだ」

フィル・ハンソン
フィル・ハンソン

「彼がどれだけプロフェッショナルで、集中力があり、フィットしているか、どれだけ野心的か、どのように軌道に乗っているか、チームの内部から見ないといけない。人々の意見は2~3年前のままで、彼がどれだけ早く成長し、進歩したかを見ていないんだ。3年前のフィルと今のフィルは違う。去年のル・マンでの最後のスティントがすべてを物語っている。彼は大きなプレッシャーにさらされていた」

ディーン自身もかつてはル・マンでクラス優勝を果たした実力者だが、容易には感心しない。しかし、ハンソンに対する賞賛は本物だ。

「彼は自分の良いところを聞かされるのが嫌いで、改善できるポイントを聞きたいだけなんだ。彼は進歩し続けていて、今後18か月間の成長は非常に興味深いものになるだろう」

では、ハンソンが家族のお金でキャリアを築いてきたドライバーから、自身の手で真のプロとなることは現実的に可能なのだろうか?アウディやポルシェ、その他のメーカーが世界耐久選手権に復帰したとき、彼は本当にリストに載るのだろうか?

「資金があるからといって悪いドライバーになるわけではないが、それを信じたくない人もいる。彼が大きく成長しているという事実を好ましく思っていない人達がたくさんいるんだ。彼はこの12か月間、多くのプロを困惑させてきた」

「彼がこれまでのペースで成長を続ければ、2023年に多くのメーカーが参入してくるころには、素晴らしいポジションを見つけられるかもしれない」

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