【控えめなスター選手】フォルクスワーゲン・ゴルフGTD ディーゼルのGTI
公開 : 2021.03.08 08:25
パワーよりシャシーの方が勝っている
フルスロットルでの加速は、興奮度は高くはないものの勢いは良い。しかしGTDが得意とするのは、シャープな中間加速。7速DSGが中段に入ったままでも、蹴飛ばすように速度を高める。
スポーツ・モードを選択すると、変速タイミングは高回転域まで使う積極的な設定になる。プラスティック製のシフトパドルを使う頻度も、少なくて済む。
試乗車は18インチ・ホイールに、オプションのDCCダンパーという組み合わせだった。英国の一般道でも非常によく機能していたようだ。
筆者が試した範囲では、コンフォートの設定から3段階引き締めた状態が良いと感じた。アダプティブ・サスペンションは、英国郊外の道を柔軟に受け流してくれる。
高速道路を穏やかに長時間走りたい時は、少し柔らかくしたくなるかもしれない。GTIクラブスポーツのようにまくし立てて走りたいなら、さらに硬くすると良いだろう。
コーナリング中にアクセルを戻すと、オーバーステアが生じることもある。だがGTDの安定性は高く、磨き込まれたサスペンションが自然な挙動を生んでいる。
フロントタイヤ側には、VAQと呼ばれる電子制御油圧式のLSDが装備されている。GTDのハンドリング精度とトラクションが高められ、一般道ではパワーやドライバーの技術よりシャシーの方が勝っている印象だった。
8代目ゴルフの控えめなスター選手
フォルクスワーゲンは、ディーゼルの排気ガスを浄化する技術代として、GTDの価格を引き上げた。英国価格は、GTDが3万2840ポンド(472万円)に対し、GTIが3万3510ポンド(483万円)となる。
この価格差なら、パワーで勝るガソリンエンジン版を選択した方が賢明ではある。しかし、GTDと相性の良い7速DSGを同様に搭載した場合、GTIの価格は3万5000ポンド(504万円)を超える。
さらに速度道路を巡航すれば、GTDの燃費は23.0km/Lくらいにまで伸びる。ランニングコストも踏まえると、GTIとの経済性の差は一層広がることになる。
ライバルとの比較でも、ゴルフGTDは優勢だ。電子制御油圧式のLSDがGTDには備わるが、ディーゼルエンジンを積むフォード・フォーカスSTやBMW 120d Mスポーツには装備されていない。
基本的に優れたゴルフGTIのシャシーを、そのまま受け継いだゴルフGTD。アダプティブDCCダンパーを装備すれば、多くのドライバーが求める以上に正確で奥行きのある操縦性を叶えてくれる。
環境規制が厳しくなる中で、ディーゼルエンジンの余命は長くはない。しかし、ゴルフGTDの魅力は従来以上に高くなったようだ。8代目ゴルフの中で、控えめなスター選手と呼んでもいいとさえ思う。
フォルクスワーゲン・ゴルフGTD(英国仕様)のスペック
価格:3万2840ポンド(472万円)
全長:4284mm
全幅:1789mm
全高:1456mm
最高速度:244km/h
0-100km/h加速:7.1秒
燃費:18.2-19.2km/L
CO2排出量:137g/km
車両重量:1465kg
パワートレイン:直列4気筒1968ccターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:200ps/3600-4100rpm
最大トルク:40.7kg-m/1750-3500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック