【まだ手に届くアナログ体験】ポルシェ911(964型) 英国版中古車ガイド ATも悪くない
公開 : 2021.03.09 08:25 更新 : 2021.07.12 18:45
空冷フラット6のオールドスクールな興奮と、信頼性や耐久性を兼ね備えた911といえるのが964型。上手な付き合い方を英国編集部が解説します。
もくじ
ー市街地走行が多いならティプトロもあり
ー男の子の気持ちをさらったターボS
ー不具合を起こしやすいポイント
ー専門家の意見を聞いてみる
ー英国ではいくら払うべき?
ー知っておくべきこと
ー英国で掘り出し物を発見
市街地走行が多いならティプトロもあり
ポルシェ911に批判があるとすれば、50年ほど大きく変わらないデザインや、フォルクスワーゲン・ビートルとの解けない深い結び付きかもしれない。しかし実際のところ、1989年に発表された964以降、そんな批判は当てはまらないものになっている。
911は代を重ねるごとに、デザインを一新してきた。大胆とはいいにくいにしても。今回取り上げる964型の911が発表された当時、25年前の911と比較して85%の部分が新設計だとポルシェは主張している。
ボディと一体のバンパーや電動で可動するリアスポイラーなど、目新しい要素も少なくなかった。インテリアも上質さを高めていた。
さらに964では、時代遅れになっていたリアのトーションビーム式サスペンションを廃止。コイルスプリングを獲得し、パワーステアリングやアンチロック・ブレーキなども標準装備されている。
エンジンにも大幅に手が加えられ、先代で3.2Lだったフラット6は、3.6Lにまで排気量を拡大。ベースグレードでも250psを獲得した。MTを選べば車重は1400kg以下に収まり、充分なパワーを備えていたといえる。
後輪駆動でのみ選択が可能だった、ATのティプトロニックも登場。車重は100kg、0-100km/h加速は0.7秒、MTの964からプラスされていたものの、動的性能の魅力に大きな遜色はなかった。
発表当初はティプトロニックに否定的な見方もあったが、都市部を走行する機会が多いなら、いま探す価値はあるだろう。近年の試乗レポートには、想像以上に滑らかだったという内容も多い。
男の子の気持ちをさらったターボS
パワーでテールを振り回せるクラシック911なら、トップグレードのターボ。1992年までは前世代の3.3Lユニットを改良し、ターボを結合。381psを引き出している。強化されたターボSも登場し、当時最も話題を呼んだパフォーマンス・モデルの1台になった。
当時の男の子の気持ちをわしづかみにした、ポルシェ911ターボS。子供部屋にポスターを貼ったという読者もいただろう。現在でもヒーロー像は薄れておらず、高い中古車価格へ反映している。
1992年までのターボSでも、英国では最低11万ポンド(1584万円)はする。1993年の1年間限り製造された、3.6Lエンジンを載せた911ターボ3.6なら、さらにその数倍は覚悟しておきたい。
最も珍しい964型の911といえば、ファクトリーレーサーの公道モデルといえる、カレラRS。今もコレクターの厳重なガレージに、ひっそり保管されていることだろう。
ターボと同じワイドなリアフェンダーで武装し、車重は155kgを減量。1990年代のポルシェ911としても、頂点を飾る1台といっていい。今なら、最低でも14万ポンド(2016万円)は用意しておきたい。
標準の964カレラなら、まだ手の届きやすい価格にある。ティプトロニックで後輪駆動のカブリオレは、英国では3万5000ポンド(504万円)前後で購入できる。
964型は、最後の空冷となった993型の1つ前のモデル。電子技術の採用も少なく、はるかに濃いアナログなドライビング体験を提供してくれる。オールドスクールな興奮と、信頼性や耐久性を兼ね備えた911をご希望なら、964型は理想的な1台になるだろう。