【戦後のクーペ 4台乗り比べ】ランチア・アウレリア/アストン マーティンDB2/ACアシーカ/ブリストル404 後編

公開 : 2021.03.21 07:05

魅惑的なボディを持つ、英国のアストン マーティンとAC、ブリストルが、イタリアのランチアと共演。戦後の6気筒クーペを、英国編集部が同時比較しました。

低く滑らかな、流線型の小さなボディ

text:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
今回揃った4台のクーペを眺めていると、現代の感覚ではスケール感を得にくい。どのモデルのデザインも、シンプルで美しくまとまっている。

しかし、その中でも特に目を引くスタイリングだと感じるのが、シルバーのACアシーカ。低く滑らかな、流線型の小さなボディがひときわ主張している。

シルバーのACアシーカとダークブルーのランチア・アウレリアB20 GT
シルバーのACアシーカとダークブルーのランチア・アウレリアB20 GT

キャビン後方には実用的なハッチバックが備わり、全体的にもアストン マーティンと共通するデザインに感じられる。スキのないアルミニウム製のボディをまとい、可憐な容姿にも見える。

ACアシーカは、4台の中では1番コンパクトで軽量。チューブラーフレーム・シャシーを備え、ドアはウッドフレームに外板が張られている。直接的なライバルといえるアストン マーティンにパワーでは劣っても、車重は200kg以上も軽い。

アシーカにはブリストル404にも搭載された100Bユニットや、フォード・ゼファー用の2.6Lなど、多くの6気筒エンジンが搭載された。今回ご紹介するアシーカには、テムズ・ディットンに拠点を構えたACカーズ独自の直列6気筒ユニットが載っている。

オーバーヘッド・カムを備える排気量1991ccで、1954年のACエース譲り。控えめなパワーとはいえ、アルミニウム製ブロックが1922年の基本設計だとは、にわかには信じがたい完成度だ。

ドライビング体験を高めるサウンド

50:50の重量配分と挙動の予想がしやすい操縦性が相まって、ドライバーの気持ちを鼓舞してくれる。900kgを切る軽い車重が、86psのエンジンを上手に引き立ててくれる。軽快に吹け上がり、アクセルレスポンスはとても鋭い。

アシーカの活き活きとした性格を生んでいる要素の1つが、SUトリプル・キャブレター。吸気口から吸い込まれる空気の唸り声と、ドライな排気音が明るい車内に充満する。

ACアシーカ(1954〜1963年)
ACアシーカ(1954〜1963年)

回転数の上昇とともに、陽気なリズムは威勢のいい轟音へ転調する。ドライビング体験を聴覚的に高めてくれ、味わい深いものにしてくれる。

今回ご紹介するACアシーカの最初のオーナーは、アマチュアレーサーのTAアルストンという人物。後にアストン マーティン2リッター・サルーンのエンジンへ載せ替えたようだ。パワフルなエンジンの方が、アシーカにはより良い組み合わせだと実感しただろう。

この4台は、戦後の高級クーペ市場というニッチ・カテゴリーへ進出を図ったモデル。いずれも個性的で、ブランド独自のアプローチが見られて興味深い。

ヴァンテージ仕様のアストン マーティンDB2は、かなり荒々しい。繊細なハンドリングより、たくましいパワーの方が優先されている。

ブリストル404は、ちょっと奇抜なフロントマスクをまとい、洗練されているものの好みは分かれるだろう。ACエースの軽い車重が生むシャープなステアリングと甘美な操縦性は、多くのドライバーの気持ちをくすぐってくれるはず。

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