【エリーゼの最初と最後】ロータス・エリーゼ シリーズ1とシリーズ3を同時試乗 後編

公開 : 2021.03.14 09:45

1996年に発表されたエリーゼ。運転好きの誰もが恋に落ちるようなロータスでした。それから25年が過ぎたいま、生産を終えるエリーゼを振り返ります。

ドライバーとクルマが直接つながる

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
初代エリーゼ、シリーズ1に乗るKシリーズ・エンジンは、昔ながらの雄叫びで目を覚ます。シフトノブは、若干曖昧な感触を伴ってゲートへ収まる。摩擦抵抗ではなく固着するように機能する、MMCブレーキも素晴らしい。

走り出した途端に、速くて鮮明で、熱狂的。クルマと一体になれる。スピードが増す前から、ステアリングホイールを握る手に豊かな感触が伝わる。その情報量の多さに、幸福を感じる。

グリーンのロータス・エリーゼ・シリーズ1と、ブルーのロータス・エリーゼ・スポーツ240 ファイナルエディション
グリーンのロータス・エリーゼ・シリーズ1と、ブルーのロータス・エリーゼ・スポーツ240 ファイナルエディション

サーキットは水浸し。でもシリーズ1のエリーゼには関係ない。驚くほど広い回転域で充分なパワーを引き出せ、扱いやすい。

ロータスは直線スピードが自慢ではない。パワートレインは、素晴らしいシャシーをサポートする脇役的。馬力はこれで充分。何よりシャシーが主役だろう。

ドライバーと直接つながったかのように、コミュニケーションできる。驚くほど高精細に、クルマを感じられる。頭で考えた瞬間、即座に正確に反応するようだ。

ハンドリングのバランスはさほど高くないが、いつでも好きなように操れる。穏やかなアンダーステアも、ギリギリのバランスを保ったニュートラルステアも、派手なドリフトも、ドライバー次第。

リミテッドスリップ・デフは備わらず、パワーが控えめなミドシップだから、濡れた路面はむしろ好都合。通常なら難しいが、この路面ならドリフトしやすい。

ただし、アクセルペダルを踏み込んでもパワーが抜けてスピンしてしまう。歩調を合わせるように穏やかにトルクを加えれば、25年モノのエリーゼをバレーダンサーのように華麗でアクロバティックに運転できる。

今でも能力の高いシリーズ1

スポーツ240は、よりシリアスな運転が求められる。しかしソリッドでまとまりが良いから、日常的にも運転しやすい。普段の乗りやすさが話題に上がることは少ないが、エリーゼが進化を続け、長い寿命を得られた理由でもある。

もちろん、シリーズ1より速い。水たまりを越えてホイールをスピンさせても、初代よりはるかに多くの対応を考えることができる。

ロータス・エリーゼ・スポーツ240 ファイナルエディション(英国仕様)
ロータス・エリーゼ・スポーツ240 ファイナルエディション(英国仕様)

筆者はこのパワートレインがお気に入り。このエンジンを載せたエリーゼがお気に入り、という表現が正確かもしれない。Kシリーズを載せていた20世紀後半のように、21世紀初頭のロータスにふさわしい。

シリーズ240には、オン・オフできるセーフティ・システムが備わっている。それでも、感覚を呼び起こすような振る舞いが残っている。

速いだけでなく、安定したアンダーステア傾向がある。さらにコーナー頂点で姿勢を変えるだけのパワーもある。一方で低速コーナーではテールの動きが速いから、クルマの挙動に注意をはらい正確な操作が求められる。
   
細かいことだが、スピンモードに入るのを感じ取りにくい瞬間がある。初代でも同様だった。今のエリーゼには、ビルシュタイン社製のダンパーが組まれている理由なのだろう。

エリーゼは初代でもスポーツ240でも、ドライビングマシンとして優れている。つまり、ロータスとしても優れている。

シリーズ1は今でも能力が高く、改めて驚かされた。繊細で機敏でもある。車重が206kgも軽いことを、ありがたいと感じさせる。

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