トヨタ・ハリアー
公開 : 2014.01.23 21:40 更新 : 2021.01.28 18:15
トヨタのクロスオーバーSUVであるハリアーがフルモデルチェンジを果たした。現在では一般的となっているクロスオーバーSUVだが、初代ハリアーが登場した1997年当初はまだカテゴリーがしっかりとは確立されていなかった。そういった意味では開祖に近い1台といえるだろう。
3代目となる新型は初代から踏襲されている5ドアのスタイリッシュなSUVスタイルがそのまま継続されている。2代目ではハリアーとハリアー・ハイブリッドがそれぞれ1車種ずつと見なされていたが、新型はハリアーの括りの中に、ガソリンとハイブリッドという2種のパワートレインが用意されている。
ガソリンモデルは最高出力151psの2ℓ直列4気筒エンジンがすべてのグレードに搭載されており、駆動方式は2駆と4駆が用意されている。一方のハイブリッドモデルは2.5ℓ直4エンジンとニッケル水素電池から電力を供給される前後2個のモーターを組み合わせたE-Fourと呼ばれる電気式の4輪駆動システムを備えている。ガソリンエンジンとモーターで前輪を駆動し、後輪はモーターのみというE-Fourシステムの構成自体は先代と同様だが、先代はガソリンエンジンが3.3ℓV6だったという点に違いがある。エンジンの152ps、フロントモーターの143ps、リヤモーターの68psを組み合わせたシステム最高出力は197psとなる。先代のシステム最高出力が272psあったのに比べればいくぶんインテリジェンスな性格になった、ということだろうか。ともあれ、新型はエンジンのダウンサイジングをはじめとして車重は先代比マイナス200kg近いので、体感できるパワー差はそこまでは大きくないのかもしれない。
新型ハリアーはひと目見て、想定する顧客層の若返りを狙っていることがわかる。その最大の要因は切れ長のヘッドライト同士を結び付けるように配されたクリア樹脂パーツのフロントグリルで、おおよそ躍動感のようなものと無縁だった先代に比べればノーマルでも数多くのドレスアップパーツでかためたような賑やかさが漂っている。
インテリアはさらに賑々しい感じで、先代でも“高級クロスオーバーSUV”らしく、ウッドリムのステアリングなどをちりばめた意匠が目立っていたが、今回はダッシュパネルからサイドのドアトリムまでがステッチの入ったレザー素材で覆われていて、格段にグレードアップした感じがある。特に最上級のプレミアム“アドバンスド・パッケージ”に用意されたディープボルドーと呼ばれるワインレッド色の本革ダッシュと黒いシートという昼間よりも夜間に映える組み合わせは、外観とは少し不釣合いなほどのVIP感(笑)が漂っている。
最初にハイブリッドモデルを試乗したのだが、ドライビング感覚はハリアー伝統の、というべき普通車感に包まれているのだが、フル加速した際のパワー感は相当なものだ。といっても乗り心地の良さを狙った足まわりの功罪で、加速減速コーナリングすべてで上屋が振られてしまうこともパワー感に加担している。前後モーターの制御でピッチングを制御しているというが、フラットな感じでは全然ない。つまりワインディングをハイペースで飛ばす、というより、パワートレインの器用さによって高速道路の巡航や都市部の渋滞まで幅広くストレスフリーな走りを提供する、という性格である。
一方ガソリンの2駆モデルは軽快なイメージで走ってくれるのだが、ハイブリッドを試乗した後だと、インテリアの見た目の高級感と、走りの質感の軽さにギャップを感じてしまう。しかもJC08モード燃費で比べると、ガソリン2駆モデルが16.0km/ℓに対しハイブリッドは21.4km/ℓも走るというのである。新型ハリアーは2駆、4駆、ハイブリッドともにグランド、エレガンス、プレミアムそして最上級のプレミアム“アドバンスド・パッケージ”という4グレードが用意されているのだが、同じグレードで比べた場合、2駆とハイブリッドの差が90万円弱なので、走りの質感とランニングコスト双方においてハイブリッドがお得に見えてくる。
自動車のみならず、今の日本で第一線にいる商品の多くが“高級”ではなく“高級感が漂うもの”、になっているように思う。ファッションの世界で言えばそれは、少し値が張るがファストファッションの域を出ないものたち。ハリアーのようなクルマは、機能や走りが先行してロジカルに構築されるのではなく、マーケティング優先で練られた商品なので、商業的な成功を収めればそれでいいのかもしれない。だがファストファッションがそうであるように、少しトガッたデザインで売ってしまうと飽きがくるのも早い。それがガソリン2駆のモデルならまだしも、ハイブリッドモーターを前後に装備し、緻密に4輪の駆動をコントロールする超ハイテクの中身を持つハイブリッドの場合でも、商品ライフに長い時間を見込んでいないように見えてしまうのは残念だし、結果としてエコでもないと思う。
(吉田拓生)
トヨタ・ハリアー2WDプレミアム “アドバンスド・パッケージ”
価格 | 360万円 |
燃費 | 16.0km/ℓ |
CO2排出量 | 145g/km |
乾燥重量 | 1610kg |
エンジン | 直列4気筒1986cc |
最高出力 | 151ps/6100rpm |
最大トルク | 19.7kg-m/3800rpm |
ギアボックス | スーパーCVT-i |
トヨタ・ハリアーE-Fourグランド
価格 | 361万円 |
燃費 | 21.8km/ℓ |
CO2排出量 | 106g/km |
乾燥重量 | 1750kg |
エンジン | 直列4気筒2493c + モーター |
最高出力 | 197ps |
ギアボックス | 電気式無段 |