【2代目サンク・ターボに乗る】ルノー5 GTターボへ試乗 元祖ホットハッチを再確認 後編
公開 : 2021.03.22 19:05
クラシック・ホットハッチとして、プジョー205 GTiやVWゴルフGTIの影になりがちなルノー5 GTターボ。英国編集部が改めて試乗しました。
シャシーに本領を発揮させるためのエンジン
2代目ルノー5(サンク)のGTターボでコーナーに侵入する。その挙動は、落ち着いて旋回させたいプジョー205 GTiとは異なる。5 GTターボなら、タイトにラインを絞っていける。
ハーフスロットルのままコーナー頂点へタッチし、右足を動かすと、アンダーステアを打ち消せる。そこから見事なニュートラル・ステアへ推移していく。もし205 GTiで同じことをすれば、急激に姿勢が変化し生け垣へ突っ込むかもしれない。
ステアリングフィールも見事。実際はちゃんと記憶していなかったこともわかった。操舵時の重みとレシオ、フィーリングがここまで見事に組み合わされたハッチバックは、ほかに運転したことがない。
プッシュロッド4気筒ターボエンジンの重要度は、一気に下る。あくまでもクルマを導きシャシーに本領を発揮させるための、進行役程度の役目でしかない。トランスミッションはプジョー205の方が良い。でも、ルノーのもので充分だ。
ひとしきり楽しんで、ルノー5 GTターボを振り返る。クルマ全体の完成度としては、プジョー205 GTiの素晴らしさを再確認することにもなった。狙い通りのまとめではないけれど。
道によっては、秀逸なバランスと完璧なステアリングを備え、車重も軽いルノー5の方が優れていることは事実。だが5 GTターボに乗るほど、最大の宿敵といえる205 GTiの仕上がりが、驚くほど高いことにも気づいた。
実は筆者は、昨年までプジョー205 GTiを7年ほど所有していた。でも5 GTターボを同様に所有したいとは思えなかった。
ゴルフGTIより登場の早い5の高性能版
プジョー205 GTiをスター級クラシックとして崇めたてて来たことは、間違いではなかったのかもしれない。でもルノー5 GTターボも特別なクルマで、ずっと珍しい存在であることに間違いはない。もう一度乗れて、とても幸せだった。
さて、ルノー5の歴史と未来に触れてみよう。
ルノー5のホットバージョンの登場が、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIより少し早いということは、意外と知られていない事実だ。ホットハッチというカテゴリーを発明したのは、ドイツ人というわけではない。
1976年に欧州で発売された、初代ルノー5の高性能モデルがアルピーヌ。2年後に英国へやって来た時には、ゴルディーニという呼び方に変わっていた。エンジンは、その後のターボと同じ4気筒の自然吸気版。最高出力は94psを得ていた。
続く1982年、ルノーはギャレット社製のT3ターボをエンジンにドッキングした5ターボを開発。最高出力110ps、0-97km/h加速8.7秒の性能を誇った。1985年に2代目5が発売されるまで、若者の支持を集めた。
2代目の5でも、今回ご紹介したGTターボが1986年に登場。その時までにプジョーは205 GTiで、市場の確かな地位を確立していた。
5 GTターボは、最高出力116psを獲得。205 GTiの106psを凌駕し、後期型の1.6Lエンジンに迫るパワーを備えていた。だがプジョーも負けじと1.9Lへ排気量を拡大し、205へ131psを与えている。