【詳細データテスト】トヨタGRヤリス 文句なく速い 俊敏ながら高い安定性 最高のドライバーズカー
公開 : 2021.03.13 20:25 更新 : 2021.04.18 22:34
意匠と技術 ★★★★★★★★★★
これは、メーカーの会計担当が喜ぶようなクルマではない。また、GRスープラや86と違って、開発コストを他社と折半してもいない。驚異的というか、昨今にあってはもはや異常ですらある。
まず、生産設備は、トヨタ元町工場内に専用施設であるGRファクトリーを用意。そして、プラットフォームも専用設計されている。厳密にいえば、トヨタのGA-BとGA-C、ふたつのプラットフォームのハイブリッドだ。
この新開発シャシーにより、リアサスペンションを構造的により複雑なダブルウィッシュボーンとし、さらに後輪への動力伝達系を搭載することが可能になった。GR-Fourと銘打った駆動系も専用で、トヨタとしてはおよそ20年ぶりとなる新型4WDシステムだ。
この軽量な電子制御システムは、選択した走行モードにより前後駆動力配分を変更する。通常は60:40だが、トラックモードでは50:50、スポーツモードでは30:70だ。さらに驚くべきことに、サイドブレーキのレバーを引くと、後輪左右ドライブシャフトの接続が自動的に切られる。
1.6Lの直3ガソリンターボエンジンも新型で、WRC2レギュレーションに適合するよう開発された。このことから、将来的にはトヨタがカスタマー向けの競技スペック車両を販売するのではないかと推測される。
わずかながらロングストローク気味で、量産3気筒では最強の262ps/36.8kg-mを発生する。またトヨタによれば、1.6Lターボユニットとしてはもっともコンパクトで最軽量だという。トランスミッションは6速MTだ。
トヨタのWRCティームがとくに力を入れたのが、ボディシェルに関する部分である。スタンダードなヤリスと異なる3ドアとされたのは、ラリー向きのシェイプで、空力パーツの追加がしやすいためだ。ルーフラインは最大で95mm低くされ、ダウンフォースと空力効率を最大限まで高めている。
可能な限りの重量削減もまた、意識して進められている。エンジンフードやドア、テールゲートなど、構造部のアルミ素材の使用範囲は拡大された。ルーフは軽量なフォージドカーボンコンポジット製で、バンパーは強く押せばたわむくらいの厚さだ。
ボディに関するヤリスの標準モデルとの違いはじつに広範囲に渡り、共通部分を探した方が早いくらい。同じパーツを使っているのは、ヘッドライトとテールライト、ドアミラー、シャークフィンアンテナといった程度だ。決して、チョコっと早くシャープに仕立てられたヤリスといった類のクルマではない。
テスト車はオプションのサーキットパック装着車で、さらなる改修が施されている。前後アクスルにはトルセンLSDが備わり、サスペンションのチューンはよりアグレッシブに。電動パワーステアリングはシャープさを増し、18インチの鍛造ホイールに履くタイヤは、標準装着のダンロップからミシュラン・パイロットスポーツ4Sへ変更されている。