【詳細データテスト】トヨタGRヤリス 文句なく速い 俊敏ながら高い安定性 最高のドライバーズカー

公開 : 2021.03.13 20:25  更新 : 2021.04.18 22:34

走り ★★★★★★★★★★

現在の基準からすれば、260ps程度の出力は控えめな数字に思えるかもしれない。それでもGRヤリスの0-97km/h加速は5.2秒と、高性能車に求められる水準に達している。

断っておきたいのは、これがローンチコントロールを備えないうえに、100km/hのはるか手前で2速へのシフトアップが必要なMT車で、しかもテストはガソリン満タン+2名乗車で行ったことだ。

燃料の量や乗車人数によっては、0-97km/hは4秒台も可能だったと思わせる加速は、ローンチコントロールなしのMT車としてはみごと。トランスミッションの操作性も、ペダルフィールも、申し分ないものだった。
燃料の量や乗車人数によっては、0-97km/hは4秒台も可能だったと思わせる加速は、ローンチコントロールなしのMT車としてはみごと。トランスミッションの操作性も、ペダルフィールも、申し分ないものだった。    LUC LACEY

この好スコアの一因は、燃料満タンでも1283kgと軽いテスト車のウェイトにある。スペックやテスト条件のどれかがひとつでも改善されれば、4秒台も夢ではないだろう。最近のハイパワーモデルでは慣れっこの数字だが、このクルマが叩き出したなら、そのタイムの持つ意味は違うものになってくる。

このクルマの小さな1.6L直3ターボは、そのパワーを苦もなく出しているように感じられる。1万kmほどのインターバルで点検が必要となる点だけは別だが。

過度にブーストが効くような感じはなく、ターボラグは低回転でわずかにみられるものの、3000rpmを超えればまったくない。そのまま、7000rpm辺りまで回りきる。

そのサウンドは、こんなふうに書き留めたテスターがいた。「低回転域では911を半分にしたようで、高回転域ではカズーのようだ」。

カズーというのは、膜を震わせて音を出す笛で、野球場で売られていたりするブーテキの原型みたいなもの。ガズーにかけたダジャレというところもあるだろうが、悪意のある比喩ではない。

こういうことになった理由に、アクティブノイズキャンセレーションとエンジンサウンドエンハンスメントの存在がある。

前者は望ましくないノイズに逆位相の音をぶつけて相殺、後者は好ましいサウンドを強調するもので、どちらもスピーカーから人工音を発するデバイスだ。むろん、音の善悪は、メーカーの判断で分けられている。

これらを抜きにした音も聞いてみたかったところだが、オン/オフの切り替えは不可能だ。どうしてもというなら、アフターマーケットのメーカー非公認パーツを組み込んで制御するしかない。

いまや、このTVゲームのSEみたいな音を演出するアイテムが、すっかり一般的になってしまった。ありがたいことに、6速MTによって、もっとも耳障りのいい回転域を、きわめて簡単に見つけられるのだが。

そのギアボックスは、法定速度内で走るなら、2速と3速でほぼ事足りてしまう。だが、最大トルクの36.8kg-mを3000rpmから発生するエンジンのフレキシビリティと、シフト操作の容易さゆえに、必要とされる以上のシフトチェンジを楽しみたくなる。

ストレートではよりひとつ上のギアに入れたくなるし、ヒールアンドトウを決めてひとつ余計にシフトダウンしたくもなるのだ。テスター陣の中には、スロットルとブレーキのペダルがもう少し近いほうが、楽にシフトできるという意見もあった。しかし、ブレーキペダルはガッチリしてムラのない踏みごたえで、制動力そのものも一線級。耐フェード性にも文句のつけようがなかった。

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