【356や初代911をオマージュ】ポルシェ911 タルガ4S ヘリテージ・エディションへ試乗
公開 : 2021.03.16 08:25
反応よく躍動的なフラット6と8速AT
以前AUTOCARでは、992型の911 タルガ4Sを英国で試乗しているが、その時は欧州仕様の左ハンドル車だった。今回は初めての右ハンドル車となる。
ポルシェは、タルガに付いてくる911としては低い動的性能、という評価を理解している。実際、ボディ剛性や車重、重心高など、タルガルーフの影響は少なからず存在する。そのため最新版では、クーペボディにハンドリングを極力近づけることに注力された。
比較しない限り、タルガ4Sの走りには心が打たれる。操縦性はダイレクトでシャープ。自然と気持ちに芽生える自信によって、運転する充足感も非常に高い。
高速道路でも郊外の継ぎ接ぎの多い道でも、乗り心地は硬めに感じられるものの、長距離を走っても疲れるほどではない。間違いなくポルシェ911へ期待する通り。魅力的なものだ。
ツインターボで過給されるフラット6も、反応がよく躍動的。450psという不足ないパワーには、6500rpmで到達する。0-100km/h加速3.8秒が本当か確かめる必要もなく、常に誇らしいほどの勢いで速度を高めてくれる。
8速PDKはMTほどクルマとの濃い関係性を生まないかもしれないが、エンジンとの相性は抜群。AT任せでも必要に感じた瞬間に、正確に変速してくれる。パドルシフトを弾いて変速を求めれば、即座に応答してくれる。
992型では共通することだが、フルスロットル以外、エンジンのサウンドは控えめ。タルガルーフを開いて運転席で直接聞いてみても、さほど違いは感じられなかった。
強く指摘するほどではないものの、今回はヘリテージ・エディション。モータースポーツの匂いがプンプンする見た目だけに、少し残念に感じられた。
注目を集めるヘリテージ・エディション
タルガルーフの位置に関わらず、車内に届く小さくないロードノイズも911で共通する部分。しかし、カブリオレほど疲れる音量でもないようだ。
タルガ4Sは、クーペボディほど操縦性がシャープではなく、走りにフォーカスされているわけではない。クルマとの一体感を大切にしたいオープントップを好むドライバーには、少し軽量で安い911カレラS カブリオレがより良い選択肢になると思う。
しかし明確な魅力も存在する。ポルシェ・エクスクルーシブが仕上げたスタイリングには、高い訴求力があることは間違いない。
タルガ4Sでも、備えるパフォーマンスを一般道で最大限に発揮することは難しい。クーペとの走りのトレードオフは、ごくわずかな範囲に留まっている。
標準のタルガ4Sの英国価格は、10万9725ポンド(1645万円)から。ヘリテージ・エディションに2万6918ポンド(403万円)の追加費用を支払う価値を見いだせるかどうかは、ポルシェ911の歴史に対する思い入れやお財布事情によるだろう。
そして、向かう先々で多くの人の注目を集めることを、どう感じるかにも。
ポルシェ911 タルガ4S ヘリテージ・エディション(英国仕様)のスペック
価格:13万6643ポンド(2049万円)
全長:4519mm
全幅:1852mm
全高:1297mm
最高速度:304km/h
0-100km/h加速:3.6秒(スポーツクロノ・パッケージ)
燃費:9.3km/L
CO2排出量:245g/km
車両重量:1675kg
パワートレイン:水平対向6気筒2981ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:450ps/6500rpm
最大トルク:53.9kg-m/2300-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック