【詳細データテスト】マツダMX-30 デザインや質感は上々 飛ばせば元気 市街地で真価を味わえず
公開 : 2021.03.20 20:25 更新 : 2021.03.27 05:14
操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆
敢えてテールゲートにMXのバッジを掲げることで、マツダは、初の量産EVにおいて著しい走りへの野心を抱いていることを示した。速度域が高くテクニカルな道では、まさしくMX-5、すなわちロードスターのように鼻先を動かす。ただし、一体感は薄い。
ロックトゥロック2.75回転のステアリングは、ゆったりしていてダイレクト感は控えめだが、正確で、手応えは心地いい。軽いが、曖昧さやよそよそしさとは無縁だ。言い換えるなら、まさしくMX-5っぽい。抑えられたコーナリング時のロールや、前輪のしっかりとしたグリップと相まって、MX-30はいい流れで走らせるのがじつに容易だ。
コーナリング中にスロットルペダルを戻しても、決してスピンしたりしないし、とっ散らかったり安定感を失ったりすることさえもない。そして、前輪駆動車らしく、パワーをかけてもリアが暴れて怖い思いをすることもない。ひたすらニュートラルにコーナリングし、気持ちよく、フリクションを感じさせないような、やる気のあるエネルギッシュな走りをみせてくれる。
ただし、コーナーの途中にバンプがあると、それが原因で瞬間的にバランスを崩すことはある。また、レスポンスのレートがほどほどなので、まだ楽しむ余地のあるペースだったとしても、ハンドリングはミニ・エレクトリックのように活発さが際立つものでもない。
それでも、MX-30の能力を最大限まで引き出すには、ハイペースで走れるワインディングが必要なのだ。バンピーな直線では、心から感心するほど緊密なボディコントロールをみせるわけではない。
現実的な航続距離が限られていることも考え合わせれば、ほとんどのオーナーは、このクルマが本当にハンドリングの冴えを示す状況を経験できないはずだ。郊外にちょうどドライビングを楽しめるルートがあって、そのすぐそばに急速充電器を見つけでもしない限りは。
緩やかなステアリングがスローに感じられる市街地周辺では、ありふれたクルマに感じられる。印象に残らないといってもいい。ラウンドアバウトで、鼻先の向きを変えるのにも操作量が多くなる。e-208やミニ・エレクトリックならもっと鋭く、明らかに俊敏な動きを見せるところだ。
もう少し、街乗りでマツダ・マジックを見せてくれてもよかったのではないだろうか。MX-30購入者のほとんどは、こうしたシチュエーションで乗ることが多くなるはずなのだから。