【ブランド末期の名作】アルヴィスTC21/100 サルーンとドロップヘッド・クーペ 前編
公開 : 2021.04.04 07:05 更新 : 2022.08.08 07:31
ニーズが高かったアルヴィスの新モデル
アルヴィス社として最後の乗用車となったTA21と、その後継仕様のTC21は1950年から1955年までに2043台が製造された。数は比較的多い。1950年のジュネーブ・モーターショーで発表すると、すぐに1300台もの注文が集まったという。
アルヴィスの新モデルへのニーズが高かったことを示している。しかし、需要は長く続かなかったようだ。
1919年から1940年までにアルヴィスが築き上げた良き伝統を、戦後の3リッターとして登場したTA21は確かに備えていた。英国製モデルとして、当初は高い評価を獲得した。
新車当時の価格は約1800ポンド。ビジネス用としてもファミリー用としても、優れたクルマだった。走りだけでなく実用性も高く、スペックは最速ではないにしろ、4シーター・サルーンとして快適に長距離をこなせた。
刺激的な広告も顧客を刺激したはず。真っ直ぐに伸びるローマ街道の写真には、「アルヴィスの脈動するパワーで、オープンロードを高速に」というキャッチコピーが添えられた。
第二次大戦前に、変速しやすいシンクロメッシュ機構と前輪駆動システムを開発していたアルヴィス。独立懸架式のフロントサスペンションを採用した英国初の自動車メーカーの1つとして、エンジンにも長寿命の確かな技術が選ばれた。
高回転域でのパワーより、トップギアでの柔軟性を重視した3.0L直列6気筒ユニットのシリンダーは、ほぼスクエア形状。メインベアリング7本で支えられる強固なクランクシャフトを備え、オーバーヘッドに真っ直ぐ並ぶバルブはチェーン駆動だ。
優れたシャシーで最高速度は160km/h
摩擦面積の広い、2枚のリーディングシューを備えるブレーキは油圧式。ボックスセクションのシャシーはしっかり溶接され、軽く低重心を叶えている。堅牢なリアアクスルは長いリーフスプリング、フロントはコイルスプリングで支えた。
138km/hの最高速度を誇ったTA21は、1953年にTC21へバトンタッチ。オクタン価の高いガソリンの普及に合わせて3リッター・エンジンは高圧縮化され、ツインSUキャブレターも採用されている。
3.77:1という高いアクスルレシオが与えられた仕様では、160km/h(100mph)の最高速度を獲得。この速度を受け、モデル名をTC21/100へ改めている。
この3リッター TC21/100は、別名グレイレディとも呼ばれる。1953年のロンドン・モーターショーで、グレーのボディとレザーで仕立てられたクルマを目にしたセールスマネージャーが、愛称としたのがきっかけだという。
通常のTC21と、TC21/100 グレイレディとの見分け方は曖昧。筆者がいえることは、後期のTC21には、TC21/100のクロームメッキされたドアフレームと、隠されたヒンジが与えられているということ。
また後期型には、ボンネットスクープの他に、ワイヤーホイール、スポットライト、サイドルーバーなども備わっているようだ。TC21とTC21/100は述べ727台が製造されているが、ドロップヘッドクーペは後期仕様で100台のみだった。
この続きは後編にて。