【歴代最高の能力と楽しさ】フォルクスワーゲン・ゴルフRへ試乗 EA888型は320psに 前編
公開 : 2021.03.26 08:25
息を呑む動的性能とハンドリングを備えた、最新のフォルクスワーゲン・ゴルフR。そのぶん高くなった価格が悩ましいと、英国編集部は評価します。
320psを生み出すEA888型4気筒ターボ
フォルクスワーゲンの素晴らしきオールラウンダー、ゴルフRが3世代目に生まれ変わった。Rを名乗る最初のゴルフ、4代目と5代目ゴルフのR32を加えれば、5世代目になる。
R32はフラッグシップモデルとして3.2LのV6エンジンをフロントに押し込み、四輪を駆動。ノーズヘビーのシャシーバランスと癖のあるハンドリングを備えてはいたものの、それに勝るスピードを秘めていた。そのぶん、高価だった。
ゴルフが6代目になり、2010年に最初のゴルフRが誕生すると、選ばれたエンジンはGTI由来の4気筒ターボ。V6からの変更だけに、当初の風当たりは強かった。
しかし羨望の眼差しを集めるホットハッチとして、ゴルフRは重要なステップを踏み出していた。そのことに、当時のわれわれは気づくことができなかったようだ。
続く7代目ゴルフにも、Rが登場。スタビリティやハンドリング、動的性能と快適性というベストミックスに太刀打ちできるライバルは存在しないといえるほど、高い完成度に仕上がっていた。
そして8代目へ進化したゴルフにも、Rが追加された。フォルクスワーゲンは、クルマを操る自由度を、最新モデルにも残してくれたようだ。先代から持ち越された要素も比較的多いのだが。
フロントに搭載される2.0Lガソリンターボ・エンジンはEA888型と呼ばれるもので、これまでもゴルフの高性能版に登用されてきたユニット。最高出力は320psまで高めつつ、WLTPの厳しいエミッション試験にもパスしている。
過去最もパワフルなゴルフ
このエンジンのおかげで、ゴルフRは過去最もパワフルなゴルフになった。価格も上昇し、英国価格は3万9270ポンド(589万円)からだが、試乗車は4万4365ポンド(665万円)。定番色のラピスブルーを選ぶだけで、755ポンド(11万円)が上乗せになる。
最大トルクは、4.1kg-m増しの42.7kg-m。一方で、直線加速はほぼ変わらないない様子。8代目ゴルフRの0-100km/加速に要する時間は、ローンチコントロールを用いて4.7秒。7代目ゴルフRは、4.6秒だった。
間違いではなく、8代目の方がカタログ上はわずかに遅い。ローンチコントロールを使わず、0.1秒を短縮できるスキルを備えるドライバーもいるだろう。
トランスミッションは、7速デュアルクラッチATのみ。欧州でもついにMTが選べなくなった。英国では、2017年の7代目ゴルフのマイナーチェンジ以降、ゴルフRのMTはラインナップから外れていた。北米では、まだMTが選べるらしい。
ボディは5ドアのみ。サイズは先代より全方向で少し大きくなっている。そのぶん左右のタイヤの間隔、トレッドは広がり、見た目もワイドになっている。車重は先代のゴルフRから46kg重くなり、1476kg。現行のゴルフGTIより88kgも重たい。
マクラーレン・レーシングのCEOからフォルクスワーゲンのR部門のトップに就任したヨースト・カピートへ、2019年に話を聞いたことがある。8代目ゴルフのRは、5年間の開発期間の半分以上を過ぎたタイミングだった。