【ゴルフRの駆動系を移植】フォルクスワーゲン・ティグアンRへ試乗 320ps+四輪駆動
公開 : 2021.04.01 08:25
高性能SUVとしての長所と限界
フォルクスワーゲン・グループに属する、ポルシェのカイエンやランボルギーニのウルスにも、同様の設定が用意されている。これらの選択肢は、ドライバーの気持ちを上げてくれるものだ。
一方で、アルカンターラ張りのセミバケットシートを持ってしても、高いドライビングポジションの高性能SUVには矛盾が拭えないことも事実。でも、この手のクルマが好きな人が少なくないことも事実なのだろう。
ティグアンRには、大きくエアインテークが開けられたフロントバンパーが備わる。ファミリーSUVらしいカタチののフロントかは、肉厚で大きなラジエターが顔を覗かせる。どこか不自然さを感じるのは、筆者だけだろうか。
一般道を走らせると、特筆したくなる長所をティグアンRは備えている。同時にSUVとしての限界も見え隠れする。
ゴルフRとは異なり、ティグアンRにはDCCと呼ばれるアダプティブ・ダンパーが標準装備。車高は通常のティグアンより10mmだけ低く、乗り心地の質感は良い。
荒れた路面を通過しても、車高の低いゴルフRほど振動をドライバーが襲うことは少ない。それでいて、走行ペースを速めても姿勢制御が犠牲になっていない。
ただし多くの高性能なライバルSUVの場合、引き締められた中にもしなやかさがあり、通常モデルかと勘違いする日常的なマナーを得ている場合が多い。だがティグアンRは、よりシリアス。
わずかに味わえる後輪主導のハンドリング
ホットハッチのような、タイトなフィーリングと振る舞いですらある。さらにSUVらしく、それぞれの動きが余計に拡大されてもいる。そこが悩ましい。
ゴルフRのように、ティグアンRも驚異的に速い。むしろ、ゴルフRより速く感じられるほど。高い着座位置により、若干安定感が薄まるためだろう。必ずしも楽しいと感じられるわけではないと思う。
スポーツ・モードやレース・モードでは、合成されたエグゾーストノートがドラマを追加し、2.0Lエンジンのターボラグは驚くほど小さい。勢いの良い加速感が組み合わさり、ドライバーに興奮を誘う。
ファミリー・クロスオーバーとして、同乗者を驚かせることはできる。高めた速度は、新しいブレーキが受け止めてくれる。ペダルの重み付けもよく調整されているようだ。
郊外のチャレンジングな道へ進んでも、ティグアンRの操縦性の精度は高く、まとまりが良く扱いやすい。タイトコーナーからの立ち上がりでアクセルペダルを踏み込むと、ゴルフRと同様にわずかに後輪主導のハンドリングが味わえるという、うれしい驚きもある。
そんな後輪駆動の感覚が味わえるのは、ストロークの長いサスペンションへ負荷が強くかかり、アンダーステアに迫ってから。Rパフォーマンス・トルクベクタリングは、基本的に四輪駆動としてのニュートラル性を保持し続けようとする。
もちろん、320psのティグアンとして単調ではない。TロックRより、高速でダイナミックな運転は楽しめる。