【GT-Rニスモと比較】トヨタGRヤリス(2) 長期テスト スピードがすべて、じゃない

公開 : 2021.04.04 09:45  更新 : 2021.07.12 18:55

長期テスト車にトヨタGRヤリスが仲間入り。ホットなラリーレプリカを日常使いすることで、クルマの本性に迫ります。

積算4007km 位置の良くないリアミラー

text:Matt Prior(マット・プライヤー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
GRヤリスのリアミラーは位置が低い。傾斜したルーフラインの先のリアウインドウが小さいためだろう。身長の高いドライバーの場合は死角が生まれ、コーナーで先を見通しにくい。巧妙なジョイント構造で、2センチくらいは持ち上げられるのだが。

でも、GRヤリスに関する不満はそれだけ。筆者はとても大好きだ。

トヨタGRヤリス・サーキット・パッケージ(英国仕様)
トヨタGRヤリス・サーキット・パッケージ(英国仕様)

積算6616km 定額制のメンテナンス・サービス

GRヤリスにも、英国トヨタのディーラーが提供している定額制のメンテナンス・サービスが適用される。だが、そのインターバルが比較的短い。

9600kmごとに165ポンド(2万5000円)の中間点検と、1万9300kmごとに375ポンド(5万6000円)の主要点検が求められている。それ以外に、6か月ごとのブレーキとトランスミッション・フルード確認も指定項目。

トヨタGRヤリス・サーキット・パッケージ(英国仕様)
トヨタGRヤリス・サーキット・パッケージ(英国仕様)

でも移動が制限されているから、その点検に達する距離はなかなか走れない。短距離中心だから、燃費も9.8km/Lまで落ち込んでしまった。

積算6791km 日産GT-Rニスモと比較

トヨタGRヤリスは、格上モデルに対しどこまで善戦できるだろうか。

今回、偶然にも日産GT-RニスモとアルピーヌA110が、長期テストのGRヤリスの隣に並んだ。いずれも、今の自動車メーカーが作ろうとは思いにくいクルマたち。トヨタと日産が一緒にある今こそ、比較しない手はない。

トヨタGRヤリス・サーキット・パッケージ(英国仕様)
トヨタGRヤリス・サーキット・パッケージ(英国仕様)

トヨタ渾身のホットハッチがどの程度の能力を備えているのか、確かめない方が失礼だろう。動的性能を確かめるべく、走り込み、ラップタイムを計測することにした。

見事な落ち着きと扱いやすさ

クルマが痛むフラットアウトでの1ラップではなく、ある程度一貫したペースでコースを周回する。公道用モデルだから、ギリギリまで攻め込むことはしない。

持ち込んだのは英国南西部にある、スランドウ・サーキット。寒くて路面は濡れていた。コースは短く、舗装は荒れている。

黒のトヨタGRヤリスと白の日産GT-Rニスモ
黒のトヨタGRヤリスと白の日産GT-Rニスモ

この条件では、GT-RよりGRヤリスの方にアドバンテージがある。GRヤリスは長距離を高速で走るのではなく、ラリーのような走行に向けて仕立てられている。

実際、トヨタは見事な落ち着きを披露した。ダンパーの姿勢制御は素晴らしく、コーナーの縁石に乗っても不安定になることはない。

センターコンソールに配されたダイヤルを回して、前後間のパワー分配率を変えることができる。でも、どの設定でも驚くようなトラクションを生んでくれる。

GT-Rはパワーではるかに勝り、後輪の扱いに苦労した。しかしGRヤリスは、そんなエッジの立った振る舞いはほとんど見せない。

GRヤリスはストレートでの速度はさすがに伸びないものの、不足ないグリップ力と秀でた扱いやすさで、短いサーキットながらGT-Rをわずかに上回ってみせた。GRヤリスのタイムは48.9秒。GT-Rは49.3秒だった。

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