【最新EV対決】後編 似て非なる3台 ニーズ次第でどれも勝者の可能性あり 実用性ならID.4
公開 : 2021.04.03 21:45 更新 : 2021.07.12 18:48
フォルクスワーゲンらしい完成度
そうこうしているうちに、50kW充電につながれた3台のバッテリーが90%ほどチャージされた。プラグを抜いて、走りはじめよう。ロンドンからここまではマッハEに乗ってきたので、ID.4に乗り換えることにした。
高速道路では、走り出してすぐ、リラックスしてスムースに動くクルマだと感じられる。マッハEがクルーズ時でも少々やぼったくノイジーだったのに対し、ID.4はすべてが穏やかだ。
パッシブダンパーと20インチという大径ホイールでありながら、すばらしく落ち着いていてしなやか。硬いがサポートに優れるシートは、ややシートバックが足りないフォード のそれよりはるかにいい出来だ。ロングドライブする際にどちらかを選べるなら、ID.4のキーに手を伸ばすだろう。
フリットウィックでM1を降り、ミルブルックを横切り、曲がりくねった細い道も通りながらベッドフォードへたどり着く道のりでも、ID.4が馬脚をあらわすようなことはなかった。声高に走りの楽しさを訴えるようなところは見出せなかったが、ここまでのルートでは十分に速く、ステアリングは楽で安心感があり、フォルクスワーゲン全車に通じるものが感じられる。
まじめで、やるべきことをやるといったキャラクターの運動性なのはたしかだが、はじめて乗って走らせてみると、きわめてたやすく馴染める。個人的にはかなり好ましい。
やはり楽しいマスタング
次に、マッハEへ乗り換えた。高速道路を離れてみると、このフォードにはフォルクスワーゲンよりやや多くギミックを用いているのが明らかなのに、不思議なことにすんなり操作することができない。慣れが必要なクルマといった感じだ。
まず、ブレーキの効きがかなり唐突だ。次に、ステアリングはID.4に比べてシャープでクイックなのに、手応えは軽い。前輪の状態を手元に伝えてくれないのだが、慣れてしまえば今回の顔ぶれの中でもじつに楽しく速いEVとなる。
重量を完全に隠し切れてはいないが、走りはかなり熱い。グリップに優れ、しかもトラクションコントロールを切れば、コーナー出口でわずかながらもテールを振ってくれる。
フロントにV8を積んだマスタングに比べれば、その凶暴さは足元にも及ばないが、そこそこヤンチャなところを見せてくれる。これも悪くない。
価格差が気になるポールスター
ポールスターは、その2台の中間といったところだ。直線加速では2台のライバルを寄せつけず、ルーフはおよそ14cmほど低いことを考えると、これはなかなか興味深い。
マッハEのように、ステアリングは軽めだ。しかし、レスポンスのスポーティさはそれほどでもないので、どんな風に走れるのか攻めてみたい気にはならない。
といっても勘違いしないでほしい。ポールスター2はハンドリングに優れるクルマだ。前後にモーターを積んでいるおかげで、ボディコントロールもトラクションも上々。だが、走らせ甲斐があるかといえば、そうでもないのだ。
走行風景の撮影を終えて、ロンドンへ戻る前に、ふたたび充電するべくミルトン・ケインズへ引き返す。道すがら、ポールスターを走らせながら、あれこれ思いを巡らせた。これはよくできたクルマだ。速く、コンフォートで、造りはよく、仕上げも見目麗しい。
とはいえ、今回テストした仕様のマッハEやID.4と比べたら、選びたいEVはこれではない。おそらく、ライバルたちのよりハイパワーで航続距離の長いバージョンが比較対象なら話は違ってくるのだろうが、今回の3台の中では価格が高すぎる。