【エントリーグレードを拡充】キアe-ニロ 39kWh 航続距離289km 純EVの競争は加速中
公開 : 2021.04.12 08:25 更新 : 2021.05.18 16:23
純EVのクロスオーバーとして先陣を切っていたキアe-ニロに、バッテリーの小さい下位グレードが追加。競争力はあるものの、強みは薄まったと英国編集部は評価します。
39kWhのエントリーグレードを追加
キアは純EVのリリースを、他ブランドより効果的に成功させたといえる。2018年には、一足先にクロスオーバーのe-ニロをリリースした。
航続距離は約450kmもあり、運転環境の人間工学にも優れ、驚くほど活発な動的性能を備えていた。そこへ手に届きやすい価格が付いていたから、現実的な使い勝手の良い純EVとして多くの人からの支持を欧州で集めた。
洗練性という点では、ベストではなかった。だが、キアのブランドをリードするモデルとしては、不足ない内容だったといえる。
数年が過ぎ、メルセデス・ベンツやポールスターなど、多くの自動車メーカーがクロスオーバーの純EVを次々に投入している。キアが対抗策として選んだ方法は、高級志向を選ばないこと。
キアがe-ニロに与えたのは、小さなリチウムイオン・バッテリー。従来まで64kWhあった容量を39kWhに抑えることで、価格帯を引き下げている。同時に航続距離は約160kmほど短くなり、289kmになっている。
英国政府は最近、電気自動車などに付与される補助金が適用される車両価格を、5万ポンド(750万円)から3万5000ポンド(525万円)以下へ狭めた。現在のニロのモデルレンジで唯一補助金の対象となるのが、追加となった39kWhのe-ニロとなる。
このエントリーグレードを、キアはe-ニロ 2と呼んでいる。補助金を引いた後で、e-ニロ 2の英国価格は2万9845ポンド(447万円)。一方、バッテリーの大きいe-ニロ 3の場合、3万7100ポンド(556万円)が購入者の負担額になる。
航続距離と一緒に所有する喜びも減少
e-ニロ 2は、価格が安くなり、高速距離が短くなっただけではない。最高出力も203psから134psへと低くなる。そのかわり、最大トルクは40.1kg-mと不足ないほど太い。最新のフォルクスワーゲン・ゴルフRと同等、といえばたくましさがわかる。
といっても、見た目はコンパクトながら車重は1700kgもあり、0-100km/h加速は9.8秒もかかる。走りには、ちょっと重々しさを感じてしまう。
さらに64kWhのバッテリーを積むほかのe-ニロと比較して、装備面でも多少の我慢が必要。インフォテインメント・システムのタッチモニターは8.0インチへ小さくなり、スマートフォンのワイヤレス充電機能が省かれる。
アダプティブ・クルーズコントロールや2ゾーン・エアコン、オートヘッドライト、バックカメラなどは標準装備のまま。e−ニロ 2でも、装備は充分と感じる人も多いだろう。さらに豪華な内容を得たいなら、64kWhの3や4+といった上級グレードを選べば良い。
筆者がe−ニロ 2から省かれたと強く感じたことは、所有する喜び。453kmの航続距離をe-ニロから取ってしまうと、残るのは普通の純EVのクロスオーバー。硬いプラスティックが溢れる車内と、少ししっくりこない運転姿勢が付いてくる。
2018年であれば、純EVの選択肢は限られ、多くの人は気にせずにいたかもしれない。でも2021年の今、選択肢はたいぶ増えてしまった。