【大蛇に呑み込まれる】ACコブラ 378スーパーブロワー Mk IVへ試乗 6.2L 588ps 後輪
公開 : 2021.04.05 19:05
現代へよみがえった1960年代のアイコン的存在、コブラ。エンジンはフォードからシボレー製へ変わっても、中毒性は変わらないと英国編集部は評価します。
6速、800rpmからでも問題なく加速する
ブリッピングを与えると、コブラ 378スーパーブロワーは左右に少し揺れる。3500ポンド(52万円)のオプションだというサイドエグゾーストから、アフターファイヤーが鳴る。ノーマルはより静かで、マフラーは車両後部へ伸びるそうだ。
発進すると、AC社の努力で従来のコブラより扱いやすい。左足の置き場はクラッチペダルの上以外ないことに変わりないが、レイアウトはクルマの中心寄りになり、運転姿勢は快適だ。
パワーアシスト付きのステアリングは、操舵が軽く正確。市街地の運転も楽にこなせる。オープン状態ではフロントガラスしか残らないが、高速道路の追い越し車線でも驚くほど風の巻き込みは少ない。
クラッチペダルは油圧式で、軽くスムーズ。前方から伸びる、中折れしたシフトレバーがコブラらしい。扱いにくそうに見えるが握りやすい位置にあり、正確に扱えばゲート間の動作は滑らかだ。
ただし、トルクはあり余るほどある。ギアチェンジが必要になる場面は多くない。回転数に関係なく、コブラはトルクの波へ乗るように前へ突き進む。
6速に入れたまま、800rpmくらいかの加速もまったく問題ない。1000rpmまで回せば、65km/hで巡航できる。そこから、ホットハッチに土煙を浴びせる勢いで加速もできる。安楽に、鋭く速度を乗せていく。
高回転域まで引っ張るのも一興。レッドラインへ吸い込まれるように吹け上がるタイプではないものの、アクセル操作へ即座に反応し、回転数の上昇とともに速度も上昇する。酔いしれてしまう。
速いものの基本的な設計は1960年代
追い越しも朝飯前。ACによれば、コブラ 378スーパーブロワーの0-100km/h加速は4.2秒だというが、間違いなくそれ以上に速く感じる。
サウンドも素晴らしい。デイトナ500のペースカーと同じエンジンが放つ雷鳴に、スーパーチャージャーの悲鳴が重なる。アクセルペダルを踏む力を抜くと、燃え残ったガソリンがエグゾーストの出口で爆発する。
100%自然に生まれる、惹き込まれるような音響だ。アクセルペダルの動きに合わせるうように、メカノイズと排気音のボリュームやトーンが贅沢に変化する。
ただし、真新しいスーパーカー顔負けの直線スピードを披露する一方で、基本的には1960年代の設計だということも忘れてはいけない。ブレーキの制動力は高いものの、現代水準の操縦性や精度でコーナリングはできない。
クイックなレシオと程よい重さのステアリングホイールのおかげで、ターンインはスマート。比較的ソフトなサスペンションと、風船のように膨らんだ幅295のエイボン製リアタイヤは、感心するほどのトラクションも生み出す。
しかし、少しプッシュしただけでコブラはすぐに暴れ出す。シャシーはわずかにたわみ、サウペンションは柔らかく、タイヤのサイドウオールも分厚い。ステアリングホイールへは充分な情報や感覚が伝わって来ず、コーナリング中は曖昧さが目立ってしまう。
ホイールスピンさせるような走りも不可能ではない。しかし、かなりの度胸が必要ではあるだろう。