【トヨタの狙いは】トヨタ「GR 86」として再起動のワケ 自動運転/電動化すすむ中で
公開 : 2021.04.05 19:15 更新 : 2021.10.27 21:43
単なるブランド戦略ではない
ブランドでは、GRに属する86。
トヨタはGRを「モータースポーツ直系のスポーツカー・ブランド」と定義している。ここに2代目86はベストマッチしていると感じる。
そもそも、86はトヨタがGRブランドを誕生させるための試金石になったといえる。
2000年代後半に初代86に関して、トヨタの製品企画が検討を始めたころ、トヨタは前述ようなVWとの戦いなど、世界戦略のなかでBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国など)と呼ばれた経済新興国での新規事業開拓が優先されてきた。
一方で、トヨタF1が終焉し、トップ・カテゴリーとしてはル・マン24時間に代表されるプロトタイプマシンになる耐久レースへの転換に加えて、量産車に近くメーカー開発者と販売店関係者が直接参加できるニュルブルクリンク24時間などに対する、トヨタのモータースポーツ領域での志向の転換が起こっていた。
その中で、トヨタが参考にしたのがスバルだった。
スバルとの協議を主導したのは、豊田章男社長である。ニュルブルクリンクはもとより、日本国内のトヨタ・テストコースで開発車両のステアリングを自ら握ることで、「これからのトヨタはどうあるべきか?」を自問自答していた。
導き出されたのは「もっといいクルマづくりの追求」という、自動車メーカーとして至極自然な言葉だった。
トヨタ生き残りには86が必要
「もっといいクルマづくりの追求」では、トヨタ全体として既存の枠組みにこだわらず、クルマづくりに対して共感できる仲間がいれば、ざっくばらんに話をして、手を取り合っておこなえることがあれば早期に実施する。
こうしたトヨタにとって新しい発想の第1弾が、86とBRZだった。
それらの誕生から9年が経ち、CASEが本格化し、グーグルやアップルなどIT大手が自動車産業への本格的な参画が現実となるなど、86を取り巻く社会情勢は大きく変わった。
こうした時世で、スポーツカーの世界は、メーカーにとって少量生産でも採算性の高い富裕層向けの数千万円クラスを主流となり、軽量コンパクトな大衆スポーツカーは音量規制や衝突安全への対応などを含めて次々と姿を消している状況だ。
それでも、トヨタは86をGR化させて存続の道を選んだ。
GRとしては近年中に、新車価格3億円とも噂される耐久レースプロトタイプをベースとしたスーパースポーツが量産される。
また、WRCから量産車へとつながった、GRヤリスなどまさにモータースポーツ直系のモデルがある。
その中でGR 86は「GRにすれば、86が生き残れる」という発想ではなく、「トヨタが生き残るためには、GR 86が必然だ」というトヨタとしての強い意志の現れだと思う。
GR 86は今後、さらに進化していく。