【存在意義は?】スバルにとっての「BRZ」 アメリカシフトから読み解く
公開 : 2021.04.06 17:45 更新 : 2021.04.08 15:55
アメリカでの躍進 日系4番手へ
スバルのアメリカシフトは、2010年代になってから着実に効果を生む。
アメリカでの利便性を考えた商品が、インプレッサ、フォレスター、アウトバックと徐々に出揃っていく中で、「ラブキャンペーン」というマーケティング戦略がスバル関係者の予想を遥かに超える社会現象となり、アメリカでのスバルに対するブランド価値がどんどん上がっていった。
その結果、日系メーカーとしては、三菱やマツダに大きく差をつけ、トヨタ、ホンダ、日産の日系ビッグに次ぐ、日系4番目のブランドとしてのポジションを確定させた。欧州系と比べても、BMWやVWを凌ぐ販売台数を誇るようになった。
こうしたアメリカでのスバル上昇気流の中で、BRZが生まれた。
ただし、当然のことながら、他のスバル車がシンメトリカルAWDを商品訴求価値として明確化している中で、水平対向型エンジン搭載とはいえ、FRスポーツカーというBRZの性質は、アメリカの一般人の目には異質なモデルとして映った。
それでもなぜ、スバルがBRZをアメリカで販売し、そして2代目への進化させたのか?
そこには1990年代末にアメリカで起こった日系チューニングカーブームの起源とする、アメリカでのスバル・スポーツブランド戦略に対する調整と新たなる挑戦がある。
STIブランドの中核として
映画「ワイルドスピード」初回作が公開された2001年頃、米西海岸を中心に全米に広がっていた日系チューニングカーブームは、すでに下降線を辿っていた。当時、その現場にいた筆者(桃田健史)はそう感じていた。
その後、スバル・オブ・アメリカは当時のWRX STIを正式販売するのだが、スバルの一般的なユーザーとSTI志向のユーザーには、日本以上にスバルブランドに対する意識の差が大きかった。
実は現時点でも、アメリカではSTIをブランドではなく「モデルの1つ」というイメージが先行しており、そうした状況を打破するために「S209」を北米専用化したことを、STIの平岡泰雄社長は筆者とのインタビューの中で語っている。
一方で、STIをモータースポーツと直結させるモデルは、ニュルブルクリンク24時間や国内スーパーGTのBRZであり、STI全体としてBRZは必要不可欠な存在であることに変わりはない。
日欧でのBRZを中核としたSTIブランドの実情を踏まえて、スバル主力市場であるアメリカで新型BRZを上手く活用することで、アメリカでのスバルブランド全体の底上げ効果が期待される。
こうした事情が大きく影響し、BRZは2020年11月にアメリカ先行発表となった訳だが、スバルとSTIの本家、日本のBRZファンにとって新型の走りはどう伝わるのか?
2021年夏の日本仕様発売が待ち遠しい。