【なぜ?】日本市場でメルセデス独り勝ち 他メーカーと明暗 背景は

公開 : 2021.04.16 05:45  更新 : 2021.10.22 10:12

VWはディーゼル問題が足を引っ張った

メルセデス・ベンツが好調に売れる半面、フォルクスワーゲンBMWは伸び悩み傾向で、相対的に輸入車登録台数ランキングの順位を下げた。

フォルクスワーゲンは、2014年まで、安定的に輸入車の登録台数1位を守っていた。

フォルクスワーゲンTクロス
フォルクスワーゲンTクロス

それが2015年にメルセデス・ベンツに抜かれて2位に、2016年はBMWに抜かれて3位になった。この後、2017年も3位で、2018年は2位になったが、2019年は再び3位となった。

2020年のフォルクスワーゲンは2位だが、登録台数はメルセデス・ベンツの64%。

2015年の直接原因は、同年9月に北米で発覚したディーゼル搭載車に関する排出ガスの不正問題だ。

不正なソフトウェアを使って規制をクリアしたことがニュースになり、同年10月には、日本国内におけるフォルクスワーゲンの登録台数が前年の52%に。

日本で売られていないディーゼルの不正で売れ行きを下げたことは、いい換えれば、フォルクスワーゲンのブランド構築が日本で大成功していたことを示していた。

フォルクスワーゲンは内外装のデザインが控え目で、過度な見栄を張らないが質感は高い。

走行安定性/乗り心地/小排気量ターボの搭載で燃費も優れ、高い能力をひけらかさない優等生的なイメージだ。

クルマに限らず、信頼を回復するのは大変。徐々に売れ行きを持ち直したが……。

また2015年頃から、メルセデス・ベンツやBMWは、駆動力が高く燃料代の安いクリーンディーゼルターボ搭載車を割安に販売して売れ行きを伸ばした。

2020年度までのクリーンディーゼルターボは、購入時に納める税金が燃費数値に関係なく非課税になり、車種によっては補助金の交付も受けられたから、ガソリンターボと同等の予算で買えた。

SUVなど車種によってはディーゼル比率が80%前後に達する。

しかし、フォルクスワーゲンはディーゼル国内輸入を計画していたが延期、パサートTDIを発売したのは2018年であった。

この間にメルセデス・ベンツは売れ行きを伸ばした。

メルセデス・ベンツも安泰ではない

BMWの状況は以前とあまり変わらない。

2020年の海外メーカー製輸入車の車種別登録台数ランキングを見ると、3位に3シリーズ、12位に1シリーズ、16位に2シリーズが入るが、登録台数は3シリーズが圧倒的に多い。

BMW3シリーズ・ツーリング
BMW3シリーズ・ツーリング

SUVの車種数は増えたが、売れ筋はメルセデス・ベンツに比べて少ない。

この売れ方について販売店に尋ねると、以下のように返答した。

「今のBMW(メーカー)は大量な販売をねらうが、それ以上に大切なのはブランドイメージだ。1シリーズや2シリーズが過剰に売れると、BMWのイメージまで変わってしまう。1番の売れ筋は、駆け抜ける喜びを強く表現する3シリーズであって欲しい」

このあたりがプレミアムブランドの難しさだ。メルセデス・ベンツの販売は好調だが、1番の売れ筋はコンパクトなAクラスやCLAになる。

今は「あのベンツが300万円から500万円で買えるなら安い」というオトク感が注目されるが、同じ状態が長年にわたって続くと、ブランドイメージまで低価格化してくる。

つまり、コンパクトな車種で拡販を図りながら、C/E/Sクラスというセダンを中心とした基幹車種の存在感を保つことも大切になる。

メルセデス・ベンツも安泰ではない。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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