【内容はまだ期待値以上】キア・スティンガーGT-Sへ試乗 366psのFR エンジンとシャシーの調和

公開 : 2021.04.14 08:25

活発なエンジンと良質なシャシーとの調和

インテリアは大きな違いはないが、知覚品質は高められたように見える。ナッパレザーで仕立てられるシートは高級感があり、何時間でも運転したくなる。着座位置は充分に低く、高いサイドシルと並ぶように座れる。

メーターパネルは見やすいアナログタイプ。エアコンの送風口の位置も良い。スイッチ類も操作しやすく、ダッシュボード上部には10.3インチの大きなインフォテインメント用タッチモニターが収まる。

キア・スティンガーGT-S(英国仕様)
キア・スティンガーGT-S(英国仕様)

英国での価格は4万2595ポンド(638万円)から。値上がり幅は小さく、スティンガーの価格としてもふさわしい。

ステアリングホイールを握ってキア・スティンガーGT-Sを走らせれば、5分もかからず2017年当時に高評価を得たわけを理解できる。活発なエンジンと正確で繊細なステアリング、太いトルクを受け止めるシャシーとの、自然な調和が成り立っている。

V6エンジンは、このクラスで最も喜びに溢れたユニットとはいえない。スピーカーからは、豊かな人工サウンドが放たれる。しかし、160km/hを超えるような常識外の速度域に届かずとも、アクセルペダルを操る楽しさを存分に味わえる。

幹線道路の滑らかな路面なら、流れるようにヒタヒタと前進していく。ロードノイズは、本物のグランドツアラーと呼ぶには少々大きいけれど。

郊外のカーブの続く道へ入る。センターコンソールのロータリーダイヤルを回し、最もスポーティなドライブモードを選択すれば、ESPは活きたままだがトラクションコントロールがオフになる。

2021年でも内容は期待値以上

限界領域でも、リアタイヤの挙動が漸進的で安定していることを示す設定だといえる。2速か3速で、コーナーの出口めがけてアクセルペダルを踏み込めば、ほんのわずかなカウンターを当てながら脱出できる。

アンダーステアは確かに抑えられているようだ。長いホイールベースが挙動を掴みやすくし、リミテッドスリップ・デフも効果的に機能している。

キア・スティンガーGT-S(英国仕様)
キア・スティンガーGT-S(英国仕様)

道幅の狭い区間では、ボディサイズを意識せずにはいられない。波打ったような路面では、サスペンションの落ち着きがなくなってしまう。一定以上の負荷ではタイヤの処理能力を超え、動的能力を存分に引き出せない。

とはいえ、こんな領域も許容する能力を備えるのは、アウディS5やジャガーXFといった数少ないモデルだけ。恐らくスティンガーは、英国の過酷な環境までは強く意識されていないだろう。

スティンガーGT-Sは素直で、ドライバーに自信を想起させてくれるモデルのまま。積極的に関与した運転を、クルマが望んでいるようでもある。現代ではとても珍しい。

ファストバックとしての完成度も高い。車内は広々としていて、乗り心地は快適。大きなインフォテインメント用モニターもマイナーチェンジで獲得した。

知覚品質の高さは、英国価格以上。キア・スティンガーGT-Sは、2021年も期待以上の内容であることに変わりはない。

キア・スティンガーGT-S(英国仕様)のスペック

価格:4万2595ポンド(638万円)
全長:4830mm
全幅:1870mm
全高:1400mm
最高速度:268km/h
0-100km/h加速:4.7秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:229g/km
車両重量:1900kg
パワートレイン:V型6気筒3342ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:366ps/6000rpm
最大トルク:51.8kg-m/1300-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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