【BMWとAMG 大関対決】BMW M550iサルーンか メルセデスAMG E 53 エステートか 後編
公開 : 2021.04.18 09:45 更新 : 2021.05.17 15:09
ブランドの頂点に君臨する高性能サルーンより1つ下。大関級といえるモデルが、従来以上に魅力度を増しているとする英国編集部。5シリーズとEクラスの特徴を探ります。
回頭性は鋭いが、柔らかさが立つE 53
BMW M550iからメルセデスAMG E 53に乗り換えてみると、全方向で視界に優れることに気づく。着座位置は若干高い。
車内はダッシュボードに大きく広がるモニターと要所に配されたクロームトリム、レザー張りのシートやパネルで仕立てられ、豪華さやハイテク感に溢れている。ドライビングポジションはBMWの方が良い。でもAMGも同等に快適で操作しやすい。
走り始めて驚かされたのが、E 53の方がM550iより回頭性が鋭いこと。コーナリング時の横方向のグリップは高く、天候を問わない強力なトラクションが得られる。現代の高性能ワゴンらしい。
乗り心地がソフトなのも、E 53の方。ボディロールは大きく、コーナー頂点をクリアする速度は姿勢制御がフラットなM550iより遅い印象。アクセルオフ時のバランスも、若干劣るように感じた。
E 53がフロントに搭載するのは、直列6気筒ツインターボのハイブリッド。きっと様々な理由で好きになれる。でも、BMWの見事なV8ツインターボほどどの誘引力はないことも、認めざるを得ない。
直列6気筒エンジンらしく、とてもスムーズにシャープに吹け上がる。サウンドは、期待したほどではない。
BMW M5に通じるV8エンジンと比べると、直列6気筒のハイブリッドは分が悪い。常用域でのトルク感では、電動スーパーチャージャーとスターター・ジェネレーターのアシストを持ってしても、M550iには及ばない。
理想をいえば、M550iのツーリング
E 53が積む9速ATも、ライバルの8速ATほどの魅力はないように思った。変速時の振る舞いや、適切なレシオを選択する制御などで。
現実的な利用環境では、燃費にはどの程度の差があるだろうか。複合的な走行条件で試乗したところ、M550iが出した数字は約8.9km/Lと、褒められない。一方、ハイブリッドのE 53でも9.9km/L程度。条件が良くても、10.6km/Lくらいに留まるだろう。
正直なところ、BMW M550i xドライブ・ツーリングがあれば理想。勝者として掲げたいところだが、BMWはM550iにステーションワゴン・ボディを提供していない。だとしても、筆者は喜んで4ドアサルーンを選ぶと思う。
高速サルーンに7万5000ポンド(1125万円)も用意できるなら、BMW M550i xドライブか四輪駆動になったM3コンペティションで悩むかもしれない。もし新しいM3が後輪駆動だったら、そちらを選ぶはず。
あるいは四輪駆動の安心感が必要なドライバーなら、M550iの方を上位に推したい。M3より広い車内を備え利便性で有利だし、ドライバーの得られる毎日の充足度の累積値も多いはず。
BMW M5コンペティションと、M550iとの2択なら答えは簡単。筆者はいつも、慎ましいM550iの方を選ぶ。そして、毎日のように運転すると思う。