【新たな始まり】メルセデス・ベンツEQSプロトタイプへ助手席試乗 航続距離は最大769km
公開 : 2021.04.07 08:25 更新 : 2021.05.14 07:41
洗練度の高さは他に類を見ない
ドライブモードは4種類。エレクトリック、コンフォート、スポーツ、インディビジュアルから選べる。
エレクトリック・モードでは、回生ブレーキの効きが強くなり、ワンペダル・ドライブも可能。技術者のエンツマンによれば、回生ブレーキを活用することで最大293kWぶんのエネルギーを電気として回収できるという。
サスペンションは、エアマティックと呼ばれるエアサスペンションが標準装備。Sクラスのものと同様に、セルフレベリング機能も備わる。高速域では車高を下げ、空気抵抗を減らしてくれる。
またSクラスのようにEQSにも、4.5度か10度の操舵角を備える、後輪操舵システムを装備できる。助手席での印象では、大きく重たいボディの割に、とても機敏に動く印象を受けた。
ボディロールはある程度生じるものの、動きは漸進的。ドライバーがコーナリング速度を高めても、抑制されている。
感心したのが、グリップとトラクション。メカニカル・システムより高速で制御されるトルクシフト機能が、フロントとリヤのバランスを知的に制御することも一因だろう。
エンツマンは、EQSの洗練度の高さは他に類を見ないものだと主張する。筆者もそれには賛同できる。高速で走行中でも車内はひそひそ話ができるほど静かで、しっとりと落ち着いている。滑らかなボディ形状が、風切り音の低減に貢献しているはず。
定評の品質やデザインに最新技術が融合
エアサスペンションも、見事な衝撃吸収性を見せる。凹凸を超えると多少の揺れは感じるものの、タイヤが発する音はまったく聞こえてこない。試乗車は21インチの265/40という冬用タイヤを履いていたが、ロードノイズも極めて小さかった。
電気自動車にもサウンドでの喜びを望むドライバーのために、3種類の人工音がデザインされている。1つには、従来的なエンジンノイズを模倣したものも含まれる。
バッテリーの容量は2種類から選べる。EQS 400に搭載されるのは、90kWh。EQS 580には107.8kWhという大容量のものが搭載される。どちらも電圧400Vのシステムで制御され、航続距離は最大で769kmに達するという。
充電器は11kWのACが標準。2kWのACと200kWのDC急速充電システムにも、オプションで対応する。200kWのシステムなら、15分で300kmぶんの電気を充電できるそうだ。
新しいEQSからは、これまでのメルセデス・ベンツ製の純EVには足りていなかった、全体的な完成度の高さを感じた。3年間の開発期間で培われた、技術力と細部へのこだわりをうかがい知ることができる。
テスラ・モデルSの登場から9年が経つ。対抗モデルといえるメルセデス・ベンツEQSは、助手席の第一印象ながら、流石と思わせるほどに競争力は高いようだ。
定評の品質やデザインに、最新の技術が融合した、ブランドの威信をかけたリムジンが間もなく誕生する。筆者自身でステアリングホイールを握れる日が、待ち遠しい。