【詳細データテスト】フォルクスワーゲンID.3 広いが質感不足の室内 過不足ない走り 総じて満足
公開 : 2021.04.11 20:25 更新 : 2021.05.01 16:07
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
だいたいのメーカーは、電動モデルへの移行を慎重に進めてきており、既存の内燃エンジン車用プラットフォームを改修して使うことが一般的だった。ところが、フォルクスワーゲンはじつに野心的で、専用ハードウェアの開発に多額の投資を行った。
ID.3の土台となるのは、新設計されたMEBアーキテクチャーだ。ホイールベースとトレッドのアジャストが可能で、今後はフォルクスワーゲングループ内で広く採用されるほか、2023年からはフォードが次世代EVでの使用もはじまる予定だ。
フォルクスワーゲングループとしては、EV専用の新開発プラットフォームはこれが2例目。第1弾はポルシェ・タイカンのJ1プラットフォームで、これはアウディもEトロンGTのベースとして使用している。
MEBは、電動パワートレインによる簡潔なパッケージングもあって、Cクラス級のハッチバックでありながら、ひとクラス上の広い室内を備えている。また、ソフトウェアの更新は、テスラのようにOTA、すなわち無線通信を介して行える。
トラス構造のバッテリートレーはアルミ製で、ID.3に用意される3サイズのバッテリーに対応できる。航続距離は、最大の77kWh仕様が541km、58kWh仕様が423km、48kWh仕様が322kmだ。しかし、注目すべきは重量で、中間サイズでも495kgある。
パワートレインのレイアウトは、数十年を遡った先祖返りのようなもの。リアモーターで後輪を駆動するRRレイアウトは、フォルクスワーゲンの祖であるビートルと同じフォーマットだ。
ドライブユニットはリアアクスルの真上、やや前寄りに積まれる。1万6000rpm回る永久励起交流同期モーターは、シングルスピードのトランスミッションを介して後輪を駆動する。オープンデフだが、ブレーキを利用したデバイスのXDSにより、左右輪へのトルク配分調節を行う。
モーターは、出力違いの2タイプを設定する。ハードウェアとしては共通だが、エントリーモデルのプロは145ps、上位のプロ・パフォーマンスと、77kWhバッテリーが搭載されるプロSは204psとなるセッティングだ。どちらの仕様でも、制動時には0.3Gの減速度を発生し、エネルギー回生でバッテリーを充電できる。
車体全面に目を向けると、公式発表された前後重量配分はほぼ50:50。前マクファーソンストラット・後マルチリンクのサスペンションはゴルフ同様で、標準仕様はパッシブダンパーを装着する。スポーツプラスパッケージを選ぶと、アダプティブダンパーと、プログレッシブ可変レシオのステアリングが与えられる。