【LS/ミライ「レベル2」発売】ホンダ自動運転「レベル3」市販化にトヨタが追従しないワケ
公開 : 2021.04.19 05:45 更新 : 2021.07.12 18:52
そろそろ社会全体が「変わる」とき?
最も大きな理由は、リアルワールドでの、ドライバーの行動や意識を徹底的に検証した結果として、トヨタが目指す方向性が定まってきたからだ。
そもそも、自動運転レベルという考え方は、アメリカの自動車技術会(SAE)、アメリカの運輸省高速道路交通局(NHTSA)、そしてドイツの国立自動車研究所(Bast)など、欧米主導で「自動運転の研究開発を目指すための指標」として、2010年代前半に設定されたものだ。
それから数年間はSAE案とNHTSA案という2種類のレベル表示があったが、2016年にSAE案に統一された。
つまり、このレベルという考え方は、あくまでも開発者やユーザーが自動運転に対する考え方を整理するための手段の1つであり、今後レベルの区分などが変わる可能性は否定できない。
今回のトヨタ「アドバンスド・ドライブ」の発表や、先日のホンダ「ホンダ・センシング・エリート」の発表をみていると、「そろそろ自動運転や、高度運転支援システムについて、新しい指標について、社会全体で考えるべき時期ではないか? 」と感じる。
こうした感想や意見を持っているのは筆者だけではなく、実際に各方面と意見交換していると自動車業界関係者の中でも「(自動運転の議論は)そろそろ次のステップに……」という声は数多く聞く。
人とクルマの関係のこれから
今回のトヨタの発表では、トヨタの原点である織機の技術で、豊田佐吉氏が考案した豊田自働織機を紹介し、「働」という「にんべんのついた、自働化」という考え方をあらためて示した。
自働織機では、糸が切れば場合に自働に停止して、人が修繕してから、人が再び機械を作動させる。
それまでは「いつ糸が切れるか心配」なので、織機の隣で人がいつも監視する必要があった。そうした人の負担を改善しているが、あくまでも人が判断して織機を使う。
むろん、現代社会においては、自働織機はより高度なシステムが採用され、完全自動化が進んでいるが、これをクルマに置き換えると、人としての「走るよろこび」、「操る楽しさ」として、完全自動化に向かうことに対して、トヨタは素直に疑問を持っているのだと思う。
こうした思いは、ホンダも、スバルも、日産も、その他の日系メーカーも同じであるはずだ。
人が所有する個人のクルマ、いわゆる「オーナーカー」の自動運転または、高度運転支援技術が目指す方向性は、「サービスカー」と呼ばれる公共交通機関として必要とされることとは異なるという考えが、今回のトヨタの発表を通じてあらためて分かったように思う。