【やり手のニューフェイス】ヒュンダイi20 Nへ試乗 フィエスタST最大のライバル 後編

公開 : 2021.04.21 19:05

ヒュンダイが生み出したホットハッチ、i20 N。実力派のフォード・フィエスタにとって、最大のライバルと呼べる仕上がりだと英国編集部は評価します。

優れた運転姿勢と質の高い乗り心地

text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ヒュンダイi20 Nで評価したいのが、ドライビングポジション。やや座面位置は高いものの、ステアリングコラムの調整域が広い。筆者にもシックリくる。

エンジンスタート・ボタンを押すと、驚くほど威勢のいい排気音とともにi20 Nは目覚める。クラッチペダルは重めだが、市街地で左足が疲れるほどではない。1速につないで発進だ。広報車を借りられる時間は90分。のんびり眺めている時間はない。

ヒュンダイi20 N(欧州仕様)
ヒュンダイi20 N(欧州仕様)

i20 Nのサスペンションは、低速域でも充分にしなやかだと感じるレベル。このクラスとしては、充分に質の高い乗り心地だといえる。

ベースに硬さはあるものの、カップシャシーで武装したルノー・クリオ(ルーテシア)・ルノースポールのように、骨に響くような強固さはない。アグレッシブな見た目とは裏腹に、日常的な移動手段としても仲良くできるだろう。

市街地を抜けたら、容姿に相応しい走りをしなくてはもったいない。ステアリングホイールにある水色のNボタンを押して、Nモードを選択する。1度押すとヒュンダイの標準設定が選ばれ、もう一度押すとドライバー独自の設定が選べる。

エンジンレスポンスとステアリングの重さに3段階があり、ESCの設定にもオフを含む3段階。レブマッチ機能とエグゾーストノートにも3段階が用意され、最初は少し選択に迷うかもしれない。

ブレーキペダルが踏まれている間、ECUはエンジンのダメージを避けるためにトルクを絞る。だがESCを完全にオフにすると、この機能を無効にできる。左足でのブレーキング時に有効だ。

正確で適度にクイックなステアリング

今回はステアリングとレブマッチ、ESPを真ん中に設定した以外、すべてを一番本気度の高いものにした。i20 Nのペダルレイアウトは完璧で、ドライバーの意図通りに操れるから問題ない。

だたし、一番アグレッシブな設定でのエグゾーストは、バックファイアの破裂音も盛大に響く。市街地など人通りの多い道では、控えた方が良いだろう。隣人や通行人への配慮も必要だ。

ヒュンダイi20 N(欧州仕様)
ヒュンダイi20 N(欧州仕様)

スペック上では、フォードフィエスタSTとかなり近い数字が並ぶ。だが、i20 Nを実際に走らせてみると、明確に個性が異なる。

路面によっては処理しきれない場面はあるものの、姿勢制御は優秀。フィエスタSTより明確にスプリングレートは柔らかく、少し穏やかさを感じる。18インチホイールを履いていても、隆起部分や舗装の剥がれをうまく処理し先を急げる。

安定感のあるステアリングホイールの感触は、安心感を与えてくれる。反応が予想しやすく正確で、適度にクイック。フィエスタSTのようなわずかな弾性感がないうえに、重み付けは適正でリニア。自信を持って操舵できる。

フィエスタSTとの比較試乗のようになってしまうが、トルクステアの度合いもi20 Nの方が小さい。コーナー出口でLSDがロックした際、アンダーステアに抗するような手応えが伝わるくらいだ。

自由に振り回せる遊び心も、ちゃんとある。i20 Nを存分に楽しめるのは、トレーリングブレーキ状態の時。直感的で強力なブレーキを、上手に操る必要がある。

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