【将来は未確定】ヴォグゾール(オペル)・インシグニアSRiへ試乗 堅実なハンサム
公開 : 2021.04.25 08:25
有能な長距離選手になってくれる
ただし、エアコンなど頻繁に用いる機能の操作系は手に届きやすい位置にあり、わかりやすい。タッチモニターでの操作も導入されているが、実際に押せるスイッチも残され、バランスが良い。
運転席は調整域が大きく、快適なドライビングポジションを取りやすい。見た目の不満は、だいぶ挽回してくれる。
後方で大きく傾斜するルーフラインによって、リアシート側の頭上空間は広くはない。足もと空間は、ゆとりを感じるだろう。荷室容量はクラストップとは呼べないものの、490Lと大きい。週末の買い物などで困ることはないはずだ。
1つ気になったのが、スポーティなシート。クッションが効き心地よい硬さながら、サイドサポートが立ち上がっていて、間の幅が狭い。冬場にたるんでしまった筆者のお腹まわりには、少し窮屈だった。
20kmも運転しないうちに、居心地が悪くなるほど。筆者より小柄な同乗者も同じ印象を抱いていたから、わたしが太りすぎたわけではないだろう。
幅の狭いシートを除けば、インシグニアは有能な長距離選手になってくれる。高速域でもロードノイズは控えめで、舗装の継ぎ目も感心するほどの落ち着きで通過してくれる。
2.0Lのガソリンターボ・エンジンは、見た目ほどの速さは生み出してくれなが、200psと35.6kg-mの額面に不足ない活発さはある。0-100km/h加速は7.2秒だという。
トランスミッションはヴォグゾール独自の9速ATで、エンジンとの相性が良い。AT任せでも素早く変速してくれるが、エンジンを楽しむために思わず自ら変速したくなる。
堅実で実用的な4ドアサルーン
パワートレイン全体の印象はダイレクト。反面、キャラクターが濃かったり、活気に溢れるとまではいえない。エンジンサウンドは刺激に欠けるし、キックダウンしても爽快な加速が生まれるわけではない。
郊外のカーブが連続するような区間でも同様。高い速度域を保って走れるものの、感触の薄いステアリングと2160kgの車重が刺激を奪う。ホットなインシグニアを探しているなら、四輪駆動のSGiを5000ポンド(75万円)増しで選びたいところだ。
燃費は特に良いわけではない。気筒休止システムを採用するが、WLTP値でのスコアは11.7km/Lから13.3km/L。今回の試乗では、アイドリングストップを機能させても10.6km/Lを超えるのがやっとだった。
電動化技術の付かない、サブプレミアム・クラスのサルーンの将来性は見通しが立ちにくい。月払いの金額でいえば、ブランド力で優れるアウディのA4やメルセデス・ベンツのCクラスとの差も小さい。
今回試乗したSRi VXラインの英国価格は、3万3525ポンド(502万円)から。同等のスペックで、クルマのバランスが優れる良いスコダ・スパーブより5000ポンド(75万円)ほど高い。
ネット会議が一般化しつつある中で、高速道路を頻繁に往復するような営業マンの数も減っていくだろう。そうであるなら、もっと楽しいインシグニアでも良いと思う。
ヴォグゾール・インシグニア単独で見れば、堅実で実用的なサルーンであることに間違いはない。時折笑顔にしてくれる活発さと、ハンサムなルックスは充分な訴求力があるといえるだろう。
ヴォグゾール(オペル)・インシグニア・グランスポーツ SRi VXライン(英国仕様)のスペック
価格:3万3525ポンド(502万円)
全長:4897mm
全幅:1863mm
全高:1455mm
最高速度:234km/h
0-100km/h加速:7.2秒
燃費:11.7-13.3km/L
CO2排出量:167-188g/km
車両重量:2160kg
パワートレイン:直列4気筒1998ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:200ps
最大トルク:35.6kg-m
ギアボックス:9速オートマティック