【クルマ好きに不思議と刺さる】フィアット・パンダ・クロス4×4試乗 2気筒に惚れる

公開 : 2021.04.23 05:45  更新 : 2021.10.09 22:30

美人ではないがかわいらしい

北海道、トマムで開催されたFCAの雪上試乗会の主役はいわずもがなジープである。

ワイルドなジープ兄弟の車列の端っこに、赤いステルヴィオと黄色いパンダ・クロス4×4がちょこっと添えられている感じ。

フィアット・パンダ・クロス4×4
フィアット・パンダ・クロス4×4

だが個人的には、今回が初対面となるパンダ・クロスに胸がときめいていた。

苦労して登った雪山の頂上で、黄色いウェアの山ガールに「写真撮ってもらってもいいですか? 」と声を掛けられた感じ?

美人じゃないが、満面の笑みと全体の雰囲気がカワイイ。こういう子がオッサン受けするのだ。

室内はスイッチ類も少なくシンプルで、シートは少し平板だが布なのでホールド性が高い。ダッシュパネルの中段から生えるシフトレバーと左手の位置関係もちょうどいい。

エンジンをかけると、ドカドカッというツインエア=2気筒の粗っぽい鼓動が勇ましい。

レシオの低い1速が素早くターボを覚醒させるのはイタ車の常套。3000rpmから上は振動も落ち着きはじめ滑らかに回るようになる。

この感じはヒストリックカーでいうところの「カムに乗る」感覚に似ている。

イタリアの小型車はエンジンを回すほど活力が漲るという公式は今なお健在なのである。

スーパーカーをゆっくり走らせるより、僅か85psでもエンジンを目いっぱい回して走る方がよっぽど運転欲が満たされる。

こういう肩ひじ張らない楽しさはMTのルノーカングーあたりと似ているが、こちらは四駆。

というわけで、雪解けしたアスファルトの道を外れ、圧雪が残る脇道に飛び込んでみた。

クルマ好きに不思議と刺さる

パンダ・クロス4×4の四駆はオンデマンド式で、普段はほぼFFのような状態で走っている。

シフトレバーの後ろにはダイヤル式のドライブモード・セレクターが付いているが、その区分もシンプルなもの。

フィアット・パンダ・クロス4×4
フィアット・パンダ・クロス4×4

「オート」と「オフロード」、そして滑りやすい坂道を下る「ヒルディセント」の3段切り替えになっている。

雪道でも「オート」で充分そうだが、それでは芸がないので「オフロード」を選んでみた。

ミシュランのスタッドレスとの相性も良く、滑らそうとしなければ雪の上でも容易に滑らない。

でもいざ滑り出すとき、アンダーステアなしにオーバーステアに移行するのは、クルマ好きには堪らないアクションといえる。

パンダ・クロス4×4のリアシートは最低限の大きさだし、ラゲッジスペースも広くはない。

でも普段使いではコンパクトなボディによる取り回しやすさの方がメリットが大きいと思う。実用性に優れ、飛ばすとスポーツカー顔負けに楽しく、500ツインエアの経験から予測すると長距離ドライブでもストレスがないはず。

しかも見た目のインパクト大で、価格も現実的(?)、所有欲も満たされる。

1台しかクルマを所有できない、でも煩悩が多いというクルマ好きにこそお薦めしたい。

それでも限定150台で、ほぼほぼ完売しているという事実が焦りを誘う。

根気よく中古を探すか、フィアットのことだから次の限定もあるはずと信じて待つか。

クルマ好きを自認する人が黄色いイタリア娘に触れたら、恋せずにはいられないはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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