ポルシェ・マカン・ターボ

公開 : 2014.02.12 23:40  更新 : 2017.05.29 19:05

■どんなクルマ?

この4月からセールスがスタートするポルシェカイエンの小さな兄弟がマカンだ。そのトップ・モデルのターボに試乗する機会に恵まれた。

マカンの第一印象は、その適度なサイズであろう。第2世代のカイエンよりも146mm短く、17mm狭く、76mm低いボディで、その寸法は全長4699mm、全幅1923mm、全高1624mmというサイズだ。カイエンがフォルクスワーゲントゥアレグと同じプラットフォームを使用するのに対し、マカンはアウディQ5と同じプラットフォームの修正版をベースとする。従って、Q5とマカンは、カイエンよりも88mm短い2807mmのホイールベースを持つ。

しかし、Q5とマカンとの間にはメカニカル的にあまり共通部分はない。マカンは、オジリナルのメカニカル・ハードウェアを持つからだ。エンジンは専用チューンであるし、新しいギアボックスと、カイエンのマルチ・プレート・クラッチが改良された4WDシステムを持つ。

フロントがマクファーソン・ストラット、リアがマルチリンクというサスペンションも、トレッドに関してはQ5よりフロントが35mm、リアが36mm拡張されている。

マカンのスタイリングそのものは、第2世代のカイエンからいつくかのインスピレーションを受けたもの。大きなクラムシェル・ボンネットには、フロント部分にエンジン冷却用のダクトと、オーバル・シェイプのヘッドランプが取り付けられる。

インテリアは予想通り高級志向だ。918スパイダーのものにの似たステアリング・ホイールや、3ダイヤル・ビナクル、タッチ・スクリーン・マルチメディア・システム、高い位置に取り付けられたミドル・コンソール・ハウジングなどが特徴的だ。一瞬ばらばらにレイアウトされているようだが、実は人間工学的に考えられた配置なのだ。

マカンは当初3台のV6エンジン・モデルが用意される。マカンSには、335bhp、46.9kg-mの3.0ℓツインターボV6が、ディーゼルSにはアウディから供給される254bhp、59.0kg-mの3.0ℓV6ターボが、そして今回試乗したトップ・モデルであるターボには、394bhp/6000rpm、56.0kg-m/1350rpmのパワー、トルクを持つ3.6ℓツインターボが搭載される。

■どんな感じ?

驚くほどスムーズで、低速から高いギアを使用していても、ミッドレンジの厚いトルクのおかげで加速は滑らかだ。若干ならがローエンドでのタイムラグはあるものの、総じてV6ユニットはエネルギッシュなエンジンだ。

ショート・ストロークの設計ゆえに、高回転での吹け上がりもよく、リミッターが動作する6700rpmまで一気に吹け上がる。スタンダード、スポーツ、スポーツ・プラスといったどのモードでもそれは変わりない。

エグゾーストはブツブツといったサウンドを奏でるが、それもエンジン音にかき消されてしまう。そのエンジン音も穏やかで、雑音といった感じはまったくしない。

エンジンは印象的だが、そのパフォーマンスは7速のデュアル・クラッチによって本領を発揮させられることになる。速く、滑らかで、ダイレクトで、シフトダウンでも回転はバッチリと合わせられる。

4WDシステムは、必要に応じて後輪へトルクを配分するが、マカンは明らかにRWDよりのクルマである。

1925kgというボディ・ウエイトにもかかわらず、マカン・ターボは0-100km/h加速4.6秒、そして0−160km/h加速が10.9秒という俊足ぶりを示す。ポルシェはプロダクション・モデルにリミッターによる最高速度の制限をしていない。従って、このSUVは265km/hというトップスピードを持つ。

燃費は11.2km/ℓ。今回のテストのように、都市部、田舎道、そしてアウトバーンの複合で走った実際の燃費は9.1km/ℓであった。

マカン・ターボの優れた点は、そのハンドリングにある。スチール製のサスペンションであるが、SUVとしては異例に高いダイナミックなクオリティ・レベルを与えることに成功している。グリップ・レベルも高く、電気機械式のアシストの入ったステアリングも非常に正確なフィードバックをもたらしてくれる。総合的な機敏さと安定さは、このクルマの重さを考えると際立っている点ということができよう。また、高速安定性も非常に高い。

マカン・ターボは、このカテゴリーのクルマを再定義することになるかもしれない。マカン・ターボにスポーツ・ユーティリティ・ビークルという言葉は不適合と思えた。その扱いの良さは、ジュニア・カイエンというよりも、ハイレベルなケイマンと言ってよいだろう。

ブレーキも注目に値する部分だ。安定しているし、プログレッシブなフィーリングがペダルから伝わる。アンチロックもその効き始めがしっかりとわかるものだった。

しかし、マカン・ターボはスポーティなクルマであるというだけではない。舗装路を離れて雪のコースに足を踏み入れれば、その深い雪の中を颯爽と駆け抜ける。オフロード・ボタンをプッシュすれば、トラクションとスタビリティ・コントロールは、4WDとトルク・ベクタリングを用いた最高の状態となる。ちなみに、グラウンド・クリアランスは198mm、アプローチ・アングルとデパーチャー・アングルは24.8°、23.6°。そしてランプ・アングルは17.1°という数字だ。

■「買い」か?

あなたがオフロード走行も楽しめるスポーティなSUVが欲しいのであれば、マカン・ターボは確実に選択肢に入るだろう。また、マカンがカイエンのセールスに取って代わるまで長い時間は必要ないだろう。

(グレッグ・ケーブル)

ポルシェ・マカン・ターボ

価格 £59,300(1,000万円)
最高速度 265km/h
0-100km/h加速 4.6秒
燃費 11.2km/ℓ
CO2排出量 208g/km
乾燥重量 1925kg
エンジン V型6気筒3604ccターボ
最高出力 394bhp/6000rpm
最大トルク 56.0kg-m/1350rpm
ギアボックス 7速デュアル・クラッチ

▶ 初試乗 / ポルシェ・マカンSディーゼル
▶ 初試乗 / ポルシェ・マカン

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