【デジタル化した車内の是非】メルセデス・ベンツS 400d 4マティック L AMGラインへ試乗 後編

公開 : 2021.04.28 19:05

ショーファードリブン前提の、ロングホイールベース版Sクラス。モデルSとしのぎを削る優雅で上品なラグジュアリーモデルを、英国編集部が評価しました。

豪奢なSクラスに適した2.9Lディーゼル

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
今回試乗した最新のメルセデス・ベンツS 400dのフロントに収まるのは、直列6気筒2.9Lターボディーゼル。トルクが太く、高回転域まで引っ張らない限り静かで、Sクラスには適したユニットの1つ。燃費も良好で、高速道路の巡航で14.0km/Lに届く。

アクセルペダルに対する反応は、これまで以上に紳士的で漸進的。多くのライバルと比べても、1ランク上のたくましさが引き出せる。足りないものは、サウンド面での魅力くらいかもしれない。

メルセデス・ベンツSクラス S 400d 4マティック L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)
メルセデス・ベンツSクラス S 400d 4マティック L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)

ステアリング操作に対する反応も安定感があり、挙動の予想がしやすく、まとまりが良い。ステアリングホイールの操舵感はかなり軽めで、手のひらに伝わる感触は薄い。レシオは中庸。操作はしやすいだろう。

ただし、コーナリング時の姿勢制御や俊敏性は、動的特性の本当の強みとはいえない。Sクラスはかなりの速度で目的地を目指せるが、そもそもクルマとしての目的が違う。

最新のSクラスの乗り心地は快適。だが高速道路では、路面によってはロードノイズが目立ったり、舗装の粗さが伝わるような場面もあるようだ。より小径のホイールの方が良いかもしれないが、上級グレードでは選択できるサイズが限られている。

今回の試乗で筆者が気になったのは、走りや乗り心地ではなく、最新のデジタル技術満載のコクピットまわり。オーナー自ら運転したいか、後ろに座りたいか、売れ行きを左右するかもしれない。

情報過多に思えるほどのモニター群

運転席へ座ると、オプションの立体的に見えるメーター用モニターの3Dコクピットと、拡張現実機能を備える特大のヘッドアップ・ディスプレイ、さらに12.9インチのMBUXインフォテインメント用タッチモニターがドライバーに迫ってくる。

慣れるまでは、情報過多に感じられる人もいるだろう。運転の集中力にも影響しそうだ。

メルセデス・ベンツSクラス S 400d 4マティック L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)
メルセデス・ベンツSクラス S 400d 4マティック L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)

3Dコクピットディスプレイは、確かに斬新な技術だとは思う。だが見たい情報の深さに、目の焦点を合わせるのが難しく感じることもあった。構造としては、右目と左目用に、2面のモニターがオーバーレイされているそうだ。

ヘッドアップ・ディスプレイは、交差点やジャンクションなどで実際の視界の様子に合わせて矢印を表示してくれる。でも、筆者には期待したほど機能的には感じられなかった。

モニターそれぞれの特性や機能を理解すれば、運転しやすく感じるかもしれない。確かに便利かもしれないが、必ずしも必要とまでは思えない。ハイテクさで驚かせるために搭載された、という印象もなくはない。

タブレットのようなセンターモニターや、高度なレンダリングのCGを好きになるかは、オーナーやドライバー次第。メルセデス・ベンツは、好きになってくれると信じている。

Sクラスの本質としては、運転するか運転してもらうための、従来的なリムジンであることに変わりはない。しかし、欧州や北米でSクラスなどのドイツ勢より多く売れているテスラモデルSの影響を考えると、車内のデジタル化は避けられなかったのだろう。

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