【地球1周を走ったミニ】BMCミニ ジャックとジルの大冒険 アフリカ〜南米 前編
公開 : 2021.05.08 07:05
新しい1275ccユニットへ置き換え
道は険しく、マラウイ南部の都市、ブランタイア到着まで9日間を費やした。未完成の新規路線を建設していたスタッフが、試走を兼ねて通行を許してくれた区間もあった。
マラウイでは、ポリオ感染で苦しむ35名の若者から温かい歓迎を受けた。国際援助団体、セーブ・ザ・チルドレンが取り組む予防接種活動の重要性を示すものだった。1980年、ポリオは中央アフリカ全域に蔓延。述べ2万人以上が感染していた。
キャンプをしながら2台のミニはザンビアを通過。巨大なカリバ・ダムを経由し、ジンバブエに入る。首都のハラレ(旧称ソールズベリー)に到着すると、地元メディアは冒険を大々的に取り上げた。
ミニは大きなダメージを負っており、次の行程に向けてエンジンの載せ替えが必要だった。「開発チームの仕事は素晴らしいものでした」フェリスが回想する。
「新しい1275ccユニットはパワーアップしていて、強固なサンプガードやエアフィルターなどで、クルマの耐久力は向上していました」。好調を取り戻したミニは、南アフリカへ到達。大西洋を越えて、南アメリカ大陸のウルグアイ・モンテビデオへ空輸された。
2台は牛の群れが草をはむ牧場を抜け、松林を縫った。鮮やかなミニは、友好的な地元の人々を喜ばせた。アフリカとは異なり、南アメリカでは低い気温と湿気がチームを悩ませた。朝露のひどい日は、寝袋が乾燥するまで数日かかったそうだ。
南アメリカを北上し、ブラジルへ入国。ポルト・アレグレから、カラフルなトラックを追い越しながらリオデジャネイロを目指した。違反を取り締まる警察の目を盗みつつ。
日の出前の準備で15kmしか走れない日も
南アメリカ担当として新しいスタッフが加わり、2台のミニはトランスアマゾニアン・ハイウェイを進む。といっても、快適な道とは程遠いものだった。
北上するほどに気温は上がり、車内の温度も上昇。窓を開けていると日中は吸血バエに襲われ、夜は無数の蚊に刺された。
安全性を考え大きな木の間にハンモックをかけたが、大きな蛇が待ち構えていた。ある夜は、黒豹がキャンプサイトを横切り、クラークたちを震え上がらせた。
質の悪いガソリンも足を引っ張った。ガソリンスタンド自体が少なく、ミニの性能を引き出すことが難しい状態だったという。
ジャングルに入ると、路面はアスファルトからダートへ。未舗装の道を5000kmほど進む難しさを、クラークが日誌に記している。「ダートはミニにとって本当に問題でした。日の出前に準備して15kmしか走れない日もあり、気が滅入りました」
ジャングル奥地へ進むほど、天候も荒れた。蒸し暑い空気が、サスペンションを中心に機械的な故障も招いた。「イタイトゥバからジャカレアカンガまでの間に、ラバーコーンは3度も破断。救援を待ちながらキャンプし、1週間は予定が遅れました」
ミニには沢山の機材のほか、20Lのガソリン携行缶も複数載せていた。重さが負荷を高めていた。
降り続く雨は、土の道路を泥沼に変えた。通過する大型トラックが、ぬかるみを一層深くした。大きな水たまりでは、ドアの側面くらいまでクルマが水に沈んだという。